イギリス労働党改革に学ぶ 2 党内ガバナンスの改革
そもそも、イギリスの労働党の歴史や背景を無視して、単純に日本の政治シーンに当てはめるのは乱暴です。
それでも、何がしかのヒントになるのではないかと論考を進めます。
労働党の野党時代、ブレアは、労働組合中心のガバナンスから抜け出すことと、党規約第4条「生産、分配、交換手段の公的所有」を書き換えることに成功します。
労働党は元々、労働組合がつくった政党ですから、資金基盤も組合に依存する一方、党大会での決議の際のウエイトが国会議員や党員よりも組合に有利にできていました。
これを変えることは、党のガバナンスのあり方を変えることです。
日本に置き換えると、民主党は、労働組合も支援団体の一つですから、党の運営上特別な扱いはありません。しかし、与党時代の意思決定の失敗の反省に立って、党のガバナンス、政策決定の仕組みを作り変えなければならないと思います。
討議して決めたことには全員で従うという当たり前のガバナンスができなかったのは、問題外です。
政権を取った時の政府と与党の意思決定システムまで含めて再構築すべきです。
与党時代は、試行錯誤した結果、自民党的な政策調査会の事前審査方式を取り、常任幹事会が最終決定機関となりました。形式的には常任幹事会が自民党の総務会に当たります。
党による事前審査システムは、ある意味、長年の自民党の知恵だと思います。
民主党の失敗は、各議員の成熟度が低く、このような党内決定システムで決まったことに従うことができなかったことにつきます。
しかし、私は、当初目指したように、「内閣に政策決定の権限を一元化」するようなモデルを追求すべきだと思います。
二つ目の改革、党規約第4条の破棄は、ある意味「革命」です。ブレアが労働党のトップになる1990年代、企業の国有化を押し進めることが正しい政策だと考える人は少数派であったとしても、1917年以来の労働党の伝統、シンボルを破棄することは困難なことでした。
それをやり抜くブレアの信念は、次のようなものでした。
「労働党の問題点は基本的な目的を失っていたこと。」その目的とは、ブレアによれば「個人の尊重」であり、「個人が機会を獲得し、貧困や質の悪い教育、不健康、貧弱な住宅や福祉によって不当に負わされた制約を打破できるよう助けること」であった。
その目的こそが重要であり、第4条のような「超現実的な左派思想」を「選挙民が共有」することはないという冷静な判断がありました。
そして、「イギリスにはサッチャー時代の産業・経済改革が必要だった。」と断言し、イデオロギーに捕われない「ニューレイバー」の旗を掲げて政権奪取に向かいます。
今の民主党には、逆に、党の立ち位置があまりにも明確でないという欠点があります。1998年綱領の「民主中道」を削除した2013年綱領の理念は「共生社会」です。
共に生きる社会、、素晴らしい、、、、。誰も反対しませんが、しかし、それでは迫力不足で、「選挙民が共有」することはないでしょう。
ブレアのように、確かに右派や左派の色分けから脱却すべきですが、それでも、労働党の綱領には「社会民主主義政党」であることは明確に書き込み、立ち位置は示しています。(ブレアの綱領では「民主的な社会主義」と定義。)
今こそ、民主党の立ち位置を明確にすべきであると確信します。野党の間に、じっくりと議論しましょう。
私の立場は、何度も言いますが、価値観の多様性を認める穏健な保守(リベラル保守)主義です。