スティグリッツ教授の政策のトータルの評価が重要。
ジョセフ・スティグリッツ教授を囲む朝食会に参加しました。
教授はシカゴ大学で宇沢弘文先生と知遇を得て、尊敬する友人として、今回宇沢先生の追悼のために来日されました。
教授は行動する学者として宇沢先生を尊敬しているとおっしゃっていました。
私も、大蔵省の経済理論研修生として宇沢先生に直接経済学を教わりました。いつも黒板いっぱいに数式を書いて独り言をいうような講義でしたので、チンプンカンプン。でも、ビールの大好きな宇沢先生の人徳には十分に触れることができました。
スティグリッツ教授のお話は、まず社会正義の実現、格差の是正、地球環境の保護、平和主義を推進することの重要性からスタート。
「GDP を増やすことは、何が幸福かを教えてくれない。」
日本経済が成長していないと批判する人がいるが、日本の労働者はベストパフォーマンスを示している。平均寿命も高いし素晴らしい国だ。しかし、労働者の賃金は上がっていない。労働者の賃金を上げるための社会的なルールの変更が重要。
そして、気候問題を解決するために炭素税を強く勧めます。環境保全に加え、日本では、財政再建のための歳入増、景気刺激にもなる。同じ増税でも、需要を減らす消費税より炭素税だとの主張。
今は、需要を喚起するための積極的な財政政策が必要だが、その財源のためには、格差是正にもつながる資産課税が良いとも指摘。財政のバランスそのものを崩してはいけないとの立場でした。教育や技術への投資の重要性も指摘。
そして、大企業の利益のためのTPPには反対。環境保全を妨害し、医薬へのアクセスが難しくなるからだと。TPPは社会正義に反し、格差を広げ、環境にも悪いと熱弁を振るわれました。
安倍内閣では、「国際金融経済分析会合」でのスティグリッツ教授の発言のすべてを公平に取り上げず、消費税の再延期のところだけをプレイアップしていましたが、チェリー・ピッキング(良いとこ取り)はいけません。
格差拡大に反対する「Occupy wall Street」運動の先頭に立って行動したスティグリッツ教授の全体のお話は宇沢先生と同じ、リベラルなもので首尾一貫されていました。
マスコミで、教授の発言の全体像が報道されないことが残念です。