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2016年3月18日

子ども・子育て支援法改正法案審議

(内閣委員会で質問する岸本周平。)

 
 子ども・子育て支援法の一部改正法案が衆議院内閣委員会を通過しました。

 事業所内保育事業への支援が主な内容ですが、野党の修正により、保育士をはじめとす子ども。子育て支援にかかる人材確保のための措置を講ずることが加わりました。

 以下、加藤勝信国務大臣に申しあげた質問の概要です。

 1.「地域型保育事業」

 事業所内保育、小規模保育、家庭的保育、居宅訪問型保育の「地域型保育事業」は、画期的なものとして評価すべきです。小規模保育は実施初年度に1655か所が設立され大きなポテンシャルを持っています。しかし、まだまだ運用上の課題、制度そのものの不備があります。

 たとえば、居宅訪問型保育は、障がい児やひとり親、あるいは離島など対象が限定されています。定員も1対1と使い勝手が悪すぎます。

 そもそも、保育事業全体で、施設整備中心の箱もの行政が改められておらず、居宅訪問型の病児保育などには助成がなされていません。

 また、他の制度、たとえば建築基準法の規制が小規模保育の新設を妨げています。いわゆる「100平米の壁」により、100平米を超えると住居から施設になり、建物全体にスプリンクラーの設置が義務付けられます。したがって、事業者は100平米未満の物件しか探さないため、事業機会が減少します。

 2.運用の問題。

 事業所内保育事業を含む地域型保育事業、厚生労働省では、通達上「家庭的保育事業等」と呼んでいるものについては、いわゆる「連携施設」を確保する必要があります。

 全国小規模保育協議会の調査によると連携施設を確保していない小規模認可保育所は32%、全体の約三分の一もあります。

 「連携施設」がないと加算が受けられないため、経営上はたいへん厳しくなるし、そもそも厚生労働省令(平成26年第61号)により義務規定になっています。

 一方で、厚生労働省の通達「雇児0905第2号平成26年9月5日」によれば、連携施設のあっせん・調整について市町村が積極的な関与・役割を果たすべきだが、それがなされていません。

 加算方式は、介護現場でもまやかしで、本来必要な水準が加算で初めて確保できるが、要件が厳しすぎて加算が取れず、経営不振につながります。「連携施設」加算は本体に埋め込むべきです。

 3.「地域型保育事業」の対象が0-2歳児に限定されている理由。

 そもそも待機児童の内0-2歳が8割を占めていたとともに、3-5歳児の保育に幼稚園が手を上げるだろうと考えていたが空振りになり、幼稚園が参入しませんでした。

 実際、都内などでは3歳児の待機児童も増えきている。3歳になっても預ける先がなく「地域型保育事業」の施設で預かると定員を食うので、0-2歳児を預かれなくなるという悪循環。

 特例給付を用いて3歳児を預かった場合の定員の弾力的措置を取るべきです。

 また、同事業を見直し、3-5歳児も対象にすれば、事業者によっては0-2歳児対象と3-5歳児対象の「家庭的保育事業等」施設を二か所つくり、「連携施設」の確保が可能になります。一石二鳥の制度改革になると考えます。

 4.企業主導型事業所内保育所のメリットは何か。

 自治体を通さずに保育所がつくれること。つまり、自治体は将来の少子化による過剰インフラを心配し、自分が負担する初期投資の枠数を少なくなるようにコントロールします。これは「自治体の壁」問題。

 ある意味、首長さんにとって当然の心配なので、たとえば法体系が異なりますが、将来定員が余った時には、「障がい児デイサービス」ができるように法整備する手もあります。

 定員以上に子どもさんを預かる「弾力化」も自治体の許可制。待機児童がいても「弾力化」しない自治体がたくさんあります。上乗せ補助を根拠に過剰な規制もします。なので、事業所主導でやれば、このレッドテープを免れます。

 事業所内保育所は自動車通勤など地方でこそ有効なモデル。満員電車に子どもを乗せて事業者内保育所に連れて行くのはなかなかたいへん。その点、居宅訪問型保育であれば、その問題がクリアされるし、施設を作る必要がなければ少人数からも対応可能。

 「地域型保育事業」の中の「居宅訪問型保育」の要件緩和をした上で、企業主導型で行えるように制度改正をすべきです。

 5.安倍総理は施政方針演説で病児保育の充実を約束。

 厚労省も病児保育の強化策を打ち出しました。

 しかしそれらは、「施設を造る時の補助」「施設に看護師を置かなくても良い」等の、施設に偏重した政策のまま。

 たとえば、病児対応型の病児保育施設においては、医院併設型が84%を占めます。これは、病児保育施設は医院の数によってキャップをはめられることを意味します。小児科医の数だけしか病児保育施設が造れないとしたら、数が増えないのは当たり前。

 一方で、訪問型病児保育は事実上、なんらの政策的支援を受けていない。

 しかし例えばNPO法人フローレンスの1日のお預かりの平均は40件近い。定員が4人と限定されている施設型よりも、訪問型は対応可能人数が多く、より広範囲でお預かりが可能となるため、効率的にニーズに対応できます。

 東京では、渋谷区、北区、文京区、足立区、千代田区などが病児保育の利用者補助(バウチャー)を行っています。

 国は訪問型病児保育を無視し続けるのではなく、施設型に拘泥して成果を出せなかった10数年を振り返り、訪問型も含めた多角的な病児保育政策を行うべきです。

 病児保育の施設偏重主義は百害あって一利なし。利用者補助(バウチャー)などで、訪問型の病児保育を支援するべき。

 また、「居宅訪問型保育」に加え、訪問型病児保育を企業主導型で行い、利用者補助(バウチャー)を制度化してはどうか。

 6.、「医療的ケア児」を学校に!

 生活する中で”医療的ケア”(鼻からチューブで栄養を取る「経管栄養」、喉に取り付ける「人工呼吸器」、胃に直接栄養を送る「胃ろう」等)を必要とする子どものことを、「医療的ケア児」と言います。

近年の新生児医療の発達により、都市部を中心にNICU(新生児集中治療室)が増設された結果、超未熟児や先天的な疾病を持つ子どもなど、以前なら出産直後に亡くなっていたケースであっても助かることが多い。その結果、医療的ケアを必要とする子どもの数は増加傾向。

 特に問題となっているのは、医療的ケア児の「義務教育」の保障。医療的ケア児のほとんどは特別支援学校に入学。その通学手段として「スクールバス」を利用しますが、医療的ケアの実施に安全性が担保できない等を理由に乗車できません。
 
 また、校内に十分な看護師を配置できない学校では、通学すること自体断られるケースも。

 さらに、よしんば通学することができても、「親同伴」であることを求められ、親(特に母親)が就労を断念し、経済環境を悪化せざるを得なくなります。どのよう子どもも、学校で教育を受ける権利があるにも関わらず、通学することすらできない子どもが存在。

 学校に通えない子どもは、「訪問教育」を選択。

 訪問教育とは、「障害が重度・重複していて養護学校等に通学困難な児童生徒に対し、教員が家庭、児童福祉施設、医療機関等を訪問して行う教育」のこと。

 しかし、この訪問教育の実態は、全国の平均で「週2,75回・180分/回」、東京では、「週3回・120分/回」という学校がほとんど。

 つまり、義務教育にも関わらず、週5回の授業が受けられないという状況。通学が可能か、そうでないかで、児が受ける「教育の差」が大きく変わることは明らかであり、在宅で過ごす医療的ケア児が学校へ行けるような対策が早急に必要。

 医療的ケア児が義務教育を受けられるようにするために、通学時や学校内において「訪問看護」と「居宅介護」の両方を利用できるよう希望します。

 付き添う看護師あるいは介護士が、通学時や授業中における医療的ケアを担うことができ、学校に通うことが可能になります。

 しかし、現在、訪問看護および居宅介護を提供する場所は、「居宅」に限定。義務教育の保障のためにも、現在の範囲を広げ、教育の場と在宅をつなぐ場(登校時や教室内での支援等)でも利用できるように、健康保険法、障害者総合支援法の改正をしていただきたい。

                                                                以上

スティグリッツ教授の政策のトータルの評価が重要。

2016年3月17日

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