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2014年2月4日

円安なのに、なぜ輸出が増えないのか?

(吹雪の国会議事堂)

 アベノミクスの効果もあって、円安が進行してきました。もちろん、一昨年からユーロ圏の危機の一服や米国の経済が回復しつつあることで、安全資産と見られていた円からユーロやドルへの資金シフトが背景にあったことが最大の原因だと思います。

 円安になれば輸出が増えるから、日本の景気は回復するという「物語」が期待されましたが、これまで輸出はふえるどころか数量ベースではマイナスが続いています。

 円安で、輸出企業の採算は良くなりますし、海外の子会社の利益は円建てでは増えて見えますから、収益が回復し、株価が上がるという「物語」はその通りになりましたが、これからもそれが続くかどうかは疑問です。

 まず、今の円安水準は、名目ならそこそこと言えますが、実質実効為替レートでみると2000年代半ばの超円安の時代よりも下回っています。1980年代の円安水準にまでなっていますから、これ以上円安になったり、円安が長期固定化するとは考えられません。

 だからこそ、円安になったからといって、海外にシフトした生産拠点を日本に戻すような経営者は、今回は見当たりません。

 2000年代半ばの超円安時の家電メーカーは国内に生産拠点を回帰させ巨額の設備投資をしました。その後、円安が修正された後、商品の競争力不足もあって、家電メーカーはたいへんな目にあいました。この時の経営判断の失敗を、他の産業の経営者は忘れていません。

 そもそも海外で生産することはコスト面からの要請だけでもなかったのです。自動車産業が典型ですが、マーケットの近くで生産する方が、市場のニーズに合わせやすいしクレーム対応も迅速にできるメリットがあるから、海外に出て行ったのです。

 円安の後、輸出が回復するまで時間がかかる(Jカーブ効果)から、まだ判らないよという人もいますが、以上のような理由でいくら待っても輸出は回復しないでしょう。今後、新興国の景気が落ち込む予想ですから、外部環境もよくありませんし。

 日本経済にとっての問題は、円安が修正された後の輸出産業の経営者が、イノベーションを起こして国際競争力のある高く売れる商品の開発に向かわずに、賃金カットや非正規雇用の拡大などのコストカットに走ったことです。

 付加価値を上げる競争ではなく価格切り下げ競争を行い、勤労者の賃金を下げてデフレを助長したことが大問題だったのです。

 安倍内閣は、労使で決めるべき賃金水準にまで介入してベースアップをしろと言っていますが、これまでの企業経営のトレンドからして一時金はともかく、ベースアップまではなかなか難しいのではないでしょうか。

 ただし、昨年度に続く今年度の補正予算5.5兆円のバラマキなどのおかげで、公共事業主体で経済成長は底上げされています。

 財政再建を犠牲にして、次の衆議院総選挙まで、毎年、景気対策と称して財政のバラマキをするならば、失業率が下がって、賃金が上がったり、正規雇用が増えていく可能性も否定できません。

 しかし、そのことは国債金利の上昇を招き、アベノミクスの出口戦略を一層難しくさせることにつながります。

 派手さはありませんが、製造業には付加価値の高い商品への移行を促し、雇用面では、非正規でも同一労働同一賃金が与えられるような地道な政策をコツコツ行っていくべきでしょう。

 円安でも輸出が増えないことで、そろそろ目を覚ましませんか。アベノリスクについて。

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