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2014年1月5日

日本の岐路を考えるー高坂正堯著「文明が衰亡するとき」

(高坂正堯著「文明が衰亡するとき」、新潮選書、1981年)

 このお正月の街頭演説の合間に、高坂正堯著「文明が衰亡するとき」を読み返しました。

 私が社会人になった翌年の1981年に出版され、私の持っている本は82年発行の初版12刷です。

 大蔵省の3年生になって経済理論研修を受けている時に読んだ記憶があります。

 その後、92年の12月に松下政経塾の勉強会で直接、高坂先生からお話をうかがう機会がありました。その時の先生の資料が本の間にはさんであったのを、今回発見して懐かしく思い出しました。

 ローマ、ヴェネツイア、アメリカを題材に「文明の衰亡の現象」をテーマに書かれた本です。

 ローマ、ヴェネツイアは既に衰亡した国ですし、ギボン著「ローマ帝国衰亡史」をはじめ先学の分析も多いです。また、近年では塩野七生さんの著書も文庫本で手軽に読めますから、衰亡の理由は語り尽くされている感があります。

 アメリカに関して高坂先生が分析した70年代は、ベトナム戦争の敗北以降アメリカが衰退していく過程でした。それでも、高坂先生は、このままアメリカが衰退していくことはなく、ローマ帝国がそうであったように、これからまだ何度も浮き沈みがあるだろううと的確に予想されています。

 また、この本の中で、ローマクラブの「成長の限界」レポートが大きく取り上げられているのも隔世の感があるとともに、40年経った今も同じ課題を突き付けられている不思議を感じます。

 高坂先生は、日本やヴェネツイアのような通商国家は「偽善」と「狡猾」に陥りやすく、変化に対する対応能力をが弱まる時が、衰頽の時であると結論づけています。

 17世紀のヴェネツイアが衰頽した理由は、成功したやり方を変えることができなかったこと、つまり守旧的性格が社会に蔓延したことだと。

 ガレー船を帆船に変えられなかったこと、地中海航路に固執しアフリカ回り航路に進出しなかったこと、高い賃金、重い税金やギルドの存在によって毛織物産業が国際競争力を失ったこと、すなわち「自由で開放的な体制から規制と保護の体制への変化、柔軟性の喪失と硬直化」が原因だと解説します。

 今の日本が陥りつつある状況によく似ています。

 アベノミクスやその背景にある自民党のバラマ財政体質には、高度経済成長の頃の日本への郷愁とこだわりが感じられます。

 2014年度予算案は、「いつか来た道」を再現しようとしています。

 安倍内閣の歴史認識も「古き良き時代」への復古主義以外の何ものでもないと思います。個人の思いとしてはともかく、政府の取るべき立場ではありません。

 人口が減少し、少子高齢化した21世紀の日本社会は、過去を振り返らず、新しい変化に柔軟に対応することを求められています。

 身の丈にあった社会保障制度の確立と規制を無くすための小さな政府の実現が重要です。そしてのことは財政再建によって、子どもや孫たちの負担を減らし、かれらの活力を生かす道につながります。

 高坂先生が今の日本をご覧になったとして、何とおっしゃるか?聞いてみたいと思います。

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2014年1月3日

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