ベンチャーファンドを育てるには?
今日は、経済産業委員会で先週に引き続き、競争力強化法案の質問に立ちました。以下、本当にベンチャーファンドを育成するための行政手法について、審議の模様をお伝えします。
(岸本)現行の中小企業事業活動促進法によるエンジェル税制認定対象企業数、対象投資家数などに関して制度創設時(平成9年度)以来の実施状況は?
(赤羽副大臣)創設以来345社に対して3989名の投資家が約87億円の投資。
(岸本)日本経済の規模からすると、年間23社、260人程度の投資家というのはたいへん小さな数字だと思う。今回の特定新事業開拓投資事業に関して、いわゆるベンチャーファンドに対する出資が損金算入されるために、当該ファンドについて認定の制度が定められている。エンジェル税制と同じ轍(てつ)は踏みたくない。
特定事業開拓投資事業計画について、法案では不明な点が多いので、具体的な要件をどう定めるのかお示しいただきたい
(茂木大臣)税の公平性を担保しながら、ファンドを運営するベンチャーキャピタルの過去の投資実績、投資計画などを判断して決めていきたいが、最初から狭い入口で限定しようとは考えていない。
(岸本)経済産業省の提案では、相当厳しく絞り込まれている。まず、ファンドが有限責任組合(LPS)であることが要件とされている。現在、ベンチャーファンドの多くはLPSであると言われているものの、それ以外に、民法組合や外国ファンド(ケイマン籍等)も存在。これらの形態のベンチャーファンドも広く対象にすべきではないか?
(赤羽副大臣)有限責任組合は監督ができるので、有象無象を排除できる。
(岸本)投資事業有限責任組合法は経済産業省の所管。見方によると、自分たちの庭先だけでことを進めようとしているとの批判がある。対象を広げるべきであると思う。また、投資家からの出資約束金額の合計が20億円以上であることが要件とされている。しかし、平成19年度の経産省の調査による実績と比べると、相当程度厳しい。認定対象が限定される可能性があり、問題ではないか。
(赤羽副大臣)調査の平均値が20億円だったので、20億円とした。
(岸本)平均20億円というのは、10億円のファンドと30億円のファンドの平均。10億円のファンドが対象にならない。10億円は大きな金額であり、なぜ排除されるのか合理的な説明はできない。さらに、ファンドの存続期間が10年以下であることが要件とされているが、シードステージから育てていく研究開発型のベンチャー企業は、エグジットまでの期間が長期化する傾向にあると言われており、10年以下というファンドの存続期間の要件は十分ではない。なぜ15年ではいけないのか?
(赤羽副大臣)10年以内に、ハンズオンの支援できっちり事業を軌道に乗せていただく趣旨。
(岸本)ファンドの目標収益率IRRが15%以上であることが要件とされているが、平成19年度の経産省の調査によると15%以上の収益率を上げているファンドは全体の7%程度なので、ここまで絞りこむのはやりすぎではないか。
(赤羽副大臣)リーマンショック以降の現状を考えるとご指摘ももっとも。しかし、事業収益の高さは重要。
(岸本)この他、ベンチャーキャピタルの出資割合が1%以上であることや、投資額の5割以上が事業拡張期のベンチャー企業であること、さらにはが投資家が銀行等の適格機関投資家(その他有価証券である株式等を20億円以上保有する者に限る。)の場合には、当該投資家による出資約束金額が2億円以上の者であることなどが要件とされているが、そのような限定を設けることが合理的なのか。
(答弁省略)
(岸本)投資先企業が中小企業者・中堅事業者に限定されており、それらの定義において資本額が一定額以下であることが要件とされている。また、中小企業者の定義において従業員数が一定数以下であることが要件とされているが、ベンチャー企業の雇用に対するインセンティブを損なうこととならないか。
(答弁省略)
(岸本)以上の審議を通じて、余りにも認定要件が厳しすぎることが明らかになった。お茶室のにじり口ではないのだから、入り口を狭くせず、ベンチャーファンドを育成するためにドアをオープンにすべきであると考えるが、経済産業大臣の見解を問う。
(茂木大臣)岸本委員から重要なご指摘をいただいた。要件として、今一つのメルクマールを出しており、まだ確定していない。使い勝手のよいものにすべく、最低限の要件にしてまいりたい・
(岸本)大変前向きなご答弁をいただき、意を強くした。今の議論を付帯決議の形で立法府から行政府にきっちりと伝えていくよう同僚議員、理事の皆さんにお願いして、質問を終わりたい。