和歌山県知事 岸本周平 official website

Blog活動ブログ

2013年11月6日

新しい資本主義を目指して―共通価値の創造

(一橋大学ビジネススクール伊藤友則教授のご講演)

 今、党内で、「暮らしを守る研究会」を開いています。

 アベノミクスは、政府が経済を意のままに操れるはずだという、いささか「国家社会主義」的なアプローチに加え、あくまでウオールストリートの強欲な金融資本主義に基づいた政策です。

 したがって、表面的に、アベノミクスを批判しても、あまり意味がないと思います。

 「暮らしを守る研究会」では、リーマンショックで失敗した、これまでの強欲な資本主義に代わる新しい「資本主義」のあり方を提案しようと準備しています。

 その一環で、今日、一橋大学ビジネススクール伊藤友則教授から、ハーバードビジネススクールのマイケル・ポーター教授が2011年から主張している「共通価値の創造(CSV:Creating Shared Value)」について勉強しました。

 ポーター教授は、これまで強欲資本主義の本家として、新たな企業の参入をはばみ、利潤を極大化する理論を提唱していました。

 その彼が、リーマンショックを受けて懺悔し、「資本主義は危機に瀕している」として、利潤の追求だけではなく、本業で社会に貢献し、社会的な価値を実現することと両立させることを目標にすべきだと提案したのです。

 企業にとっての価値とは、経済的便益と社会的便益の両方(共通価値)であり、それを企業と地域社会が共同で創出しなければならないと言います。

 逆に、日本では社会貢献していることが、利益を出さない言い訳に使われている場合があります。むしろ、利益が出なければ、永続的に社会的な価値を創造する活動もできません。

 健康にやさしい食品や環境にやさしい製品(プリウスなど)、交通事故の低減(キリン・フリー)などの社会ニーズに合った商品を売り出せば、共通価値が創造できます。

 また、バリューチェーンの見直しにより、資源の有効活用(水、紙など)や安ければ良いという調達ではなく、サプライヤーの生産性を上げるような調達に切り替えることで、共通価値が生まれます。

 有名なネスレの例では、単なるフェアートレードとして最貧国の農家から調達しているのではありません。アフリカや中南米の零細農家に生産性向上、環境保護のアドバイスや銀行融資の保証までして、品質の高いコーヒー豆やココアを確保しています。

 その結果、消費者の喜ぶ競争力の高い商品を売ることができて、利益が増えます。それを、さらに零細農家や、自社の従業員に還元し、永続的な共通価値の創造が可能になります。

 ネスレの株価は、そのことを反映してうなぎ上りに上昇。結局、株主の利益にもつながります。

 本業で社会に貢献し、利益も出していくという考え方は、実は日本には昔からありました。近江商人の「売り手に良し、買い手に良し、世間に良し。」という家訓は、共通価値創造そのものです。

 渋澤栄一翁の「論語と算盤」にも同じ発想がうかがえます。

 このように本来、日本の企業家に親和性のある「共通価値を実現する資本主義」こそが私たちの寄って立つ基盤です。

 これを公益資本主義と言うのか、共益資本主義と言うのかネーミングは難しいですが、わかり易い表現で、民主党の経済政策のプラットフォームにしていきます。

 「共通価値を実現する資本主義」は、社会的起業や、NPOなどの新しい公共の動向とピッタリ合うものだと確信します。

 たまたま安倍総理も今年の月刊文芸春秋1月号で、「道義を重んじる」資本主義の提案をされています。

 しかし、残念なことに、9月にアメリカのウオール街を訪問し、「アベノミクスは買い!!(Buy My Abenomics)」と強欲資本主義におもねった発言をされました。

 結局、1月の論文はゴーストライターの論文で、ご自身の意見ではなかったことがバレてしまいました。

 私たちは、付け焼刃でない、真剣な態度で、「共通価値を実現する資本主義」を推進します。

イギリス労働党改革に学ぶ 6 社会民主主義を越えて

2013年11月3日

活動ブログ
一覧へ

競争力強化法案―古い行政手法は止めるべき

2013年11月8日