軽部謙介著「沖縄経済処分」
(軽部謙介著「沖縄経済処分」、岩波書店)
時事通信社の軽部謙介さんが、新しい本を書かれました。
軽部さんとは、彼が大蔵省の記者クラブ時代からお世話になっています。トヨタ自動車の渉外部でアメリカに出張する機会が多かった時には、ワシントン支局長をされていて、情報交換の機会をいただき助けてもらいました。
お若い頃から、著書がたくさんあって、「検証 経済失政―誰が、何を、なぜ間違えたか」(岩波書店)、「ドキュメント ゼロ金利―日銀vs政府 なぜ対立するか」(岩波書店)など、綿密な取材に基づいた名著を出されています。
今回の「沖縄経済処分」は、沖縄返還を前に、突然おそった「ニクソンショック」の中、それまで沖縄県民が使っていた米ドルを円に交換する際の、日米密約に焦点をあてています。
しかし、その過程で1ドル360円の交換レートが1ドル305円になり、財産が目減りした上、急激なインフレで苦しむ沖縄県民の立場に立って、復帰時の沖縄の苦悩を生々しく再現しています。
私も、国際金融局でアジア通貨室長の職務を経験し、ユーロ導入など為替の勉強はしましたが、為替レートの変化による沖縄返還時の様子は、この本で初めて知りました。
自国通貨が安くなることの、厳しさが体感できました。そして、沖縄の皆さんに、基地問題だけでなく、通貨問題でも何度もつらい思いをさせていることを再認識しました。
しかし、今の私たちは、このことを昔話として、のんびりと読んでいられません。
1000兆円を超える公的な債務を抱え、日本国債の格付けもどんどんと引き下げられる中、突然の市場のアタックによる円安、その後のインフレの悪夢は、他人事ではすみません。
沖縄返還をめぐる、日米の国益のぶつかり合い、そして政治家と官僚が、国益を守るために必死の攻防を繰り広げる姿に感動しました。
国内で与野党が足の引っ張り合いをしているゆとりはないと思います。まして、いわんや、党内で内輪もめをしていてはいけません。
私たちは歴史に学ぶべきです。
国益を守るために、政治家も官僚も経営者の皆さんと一緒になって、今の困難な状況を打破する努力をしなければなりません。
その意味では、当たり前のこととは言え、この週末に読んだ本書「沖縄経済処分」に触発されました。
興味のある方は、ぜひお読みください。
私たちのために。
私たちの子供たちのために。
私たちの大切な人のために・・・。
信じられない政治に終止符を打つ。