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2014年6月16日

法人税の引き下げをどう考えればよいのか?

(首相官邸:ウキぺディアより転載。)

 法人税率の引下げが、安倍内閣の成長戦略の目玉になっています。

 その理由は、「今の日本の法人税実効税率は35.46%であり、仏の33.33%、独の29.59%、英国の23%などと比べて高過ぎる。アジアでは、中国25%、韓国24.20%、シンガポール17%となっており、少なくとも20%台にしなければ企業が日本から逃げていく。」というものです。

 減税には当然、財源が必要ですが、そのめどが立たないので、それは年末に先送りし、何が何でも5%を超える実効税率の引き下げを目標にしているようです。

 さあ、これをどう考えるか?

 私は、法人税そのものを引下げることには賛成です。

 まず、法人というある意味中間的な擬制の主体に課税をすることは好ましいことではないこと。その上、売上マイナス経費を課税対象にしているので、節税、脱税が行われやすいわけです。消費課税や固定資産税などに比べて、不公平感が強い税です。

 いきなりゼロにはできませんが、経済への中立性を考えれば、税率は低い方が望ましいのです。

 ですから、民主党政権の時に、私も党税調の役員として14年ぶりの法人税率引下げのために頑張りました。ただし、その時には財源対策にも大変な汗をかきました。

 法人税を減税するためには代替の財源を見つけなければなりません。

 安倍さんの周囲では、今年は税収が1兆円以上予想を上回るからそれを財源にできるとか、減税して景気が良くなれば税収も増えるから、それを財源にしたら良いという意見が聞こえてきます。

 これには驚きました。税収は景気が良くなれば上振れますが、景気が悪くなれば下振れます。そんなええ加減な税収見込みを恒久財源にすることはあり得ません。小学生でもわかる理屈です。

 法人税には租税特別措置や加速度的な減価償却制度などの企業優遇制度がたくさんあります。ですから、税率を引下げるためには、これらの優遇制度を廃止し、課税ベースを広げることが必要です。

 その次に、本当の問題は「実効税率」の意味にあります。

 法人税の「実効税率」とは国税と地方税の合計です。

 日本の35.64%は、国税の25.5%と地方法人税の組わせによるものです。国の法人税は既に25.5%まで低くなっています。

 (注1)国税の法人税からは支払った地方法人税を経費で落とせるので、税率が少数点以下になっています。

 英国、仏、中国、シンガポールなどは地方法人税はありません。国税だけを比べると、日本の25.5%は決して高くありません。

 (注2)アメリカは州によって法人税率が大きく異なりますので、一番税率の高いカリフォルニア州を例に出す財務省の資料は使わない方がフェアーです。

 実は、法人税が高くて困るのなら、地方法人税のあり方を議論する方が建設的なのです。

 まず、法人税は景気の動向に大きく左右されますから、本来、地方税には向いていません。

 しかも、東京一極集中の現状を考えれば、地方法人税は地域による経済格差を反映する不公平な税制です。少しでも公平にするために「地方法人特別税」をつくって均しているくらいです。

 本来は、地方法人税を全廃して、法人税の実効税率を下げ、その財源は地方消費税などをあてることを正面から検討すべきです。

 安倍内閣はそのことがたいへん大きな課題であるからと、まっとうな議論から逃げています。

 財源の手当てもなく、ただ5%くらい法人税の実効税率を下げれば、景気が良くなるなどと甘い議論をしているような財政状態でないことは国民の多くが知っています。安倍内閣には猛省を促したいと思います。

 ちなみに、お金に色はついていませんから、財源なしに法人税を減税すれば、消費税の増税財源で減税したことになります。企業を優遇するために大衆課税をしたことになってしまいます。

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