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2014年5月14日

電力システム改革は必要か?

(経済産業委員会の電力事業法改正の審議で質問に立つ岸本周平。)

 今回の電力システム改革は欧米の先進事例を見るまでもなく、成功するかどうか大きなリスクがあると思います。しかし、日本経済の構造変化を前提にすると、変えないことの「機会費用」もとても大きいので、チャレンジするしかないと言う認識です。

 これまでは、総括原価主義に基づく料金規制、地域独占、電力債に係る一般担保制度、送配電と発電の垂直的統合という枠組みで、一般電気事業者に電力の供給責任を法的に課してきたわけです。

 この仕組みは、高度経済成長の時のように、毎年、電力需要が伸びていく時にはうまく働きました。いわば、「計画経済的資本形成」が行われたわけです。

 今、電力需要は頭打ちになり、今後減少していくことが予想される中、電力需給の調整を市場メカニズムに委ねる方が、合理的ではないか。つまり、事業者の資産効率を上げるためには、他社の電気や資産を効率的に活用するほうが国民経済的に望ましいのではないか。

 この考え方が、電力システム改革を進める根拠です。

 発電と送配電を分ける「発送電分離」がよく話題になりますが、これも、電力市場における競争状態を実現する一方法に過ぎません。

 共通の送電網を公共財として管理し、市場参加者がそこに自由にアクセスすることができるようにすれば、より経済合理的な仕組みになります。テレコムの改革と同じ発想です。

 しかし、それでは、本当に発電事業者がどんどん新規参入して競争によって電気料金が下がるようになるのでしょうか?

 今のところ、100万キロワット規模の発電所が2件、50万キロワット規模が2件程度しか新規の計画がありません。東京電力だけでも6000キロワットの需要がある中では、競争が起きるような規模感ではありませんね。

 また、日本エネルギー経済研究所の経済産業省委託調査「諸外国における電力自由化等による電気料金への影響調査(2013年3月)では、「日本を除く調査対象国では、電力自由化開始当初に電気料金が低下していた国・州もあったが、概ね化石燃料価格が上昇傾向になった2000 年代半ば以降、燃料費を上回る電気料金の上昇が生じている。」とされています。

 電力自由化イコール電気料金引き下げでもないのですね。

 また、小売り参入の全面自由化を行った後も、法律では「経過措置として、一定期間、料金規制を継続する」とされています。

 パラダイムを変えて自由化すると言いながら、逆に人為的な規制が増えていく可能性もあります。

 自由化と料金規制は相矛盾します。経過措置はどのような状況になれば、いつ頃解除されるのか不明です。

 また、小売り全面自由化に伴って、一般電気事業者の電力供給義務は撤廃されます。

 電力の供給力を担保するために、小売り事業者に供給力確保義務を課すことになります。しかし、事業者は確実な量だけ売るようにするでしょうから、事業者の供給力の総和が果たして、ピーク時の電源として間に合うのかは約束の限りではありません。自由化後のカリフォルニア州の大停電のようなことにならないのか心配です。

 何より、タイミングの問題もあります。電力を自由化すれば、野菜と同じで、電力が余れば安くなり、足りなければ値上がりします。今は、電力の受給がひっぱくしており、一般電気事業者の財務状態も最悪です。自由化するとしても今なのか?慎重な判断が必要です。

 それでも、私は次のような判断で、自由化の方向性には賛成です。

 最初に書いた通り、高度成長を終え、電力需要が頭打ちになるなか、右肩上がりの投資を続けて行くことは、かえって資産効率を下げます。

 むしろ他社の電気や資産を効率的に活用するために、積極的なM&Aが行われるようになるはずです。関西電力と中部電力の発電会社が合併するとか、そこに東京ガスも参加することは夢物語ではありません。

 金融の自由化でメガバンクが3行になりました。私が就職活動をしていた頃には想像もできませんでした。

 送配電と発電の垂直的統合を止めれば、発電会社などで水平的な統合が起こるでしょう。財務戦略に長けた企業が総合エネルギー企業として生き残っていくわけです。

 発電会社が少なくなればエネルギーの調達では仕入れ力が増し、安い調達も可能になります。電力自由化のプロセスで、日本経済の産業競争力も高まっていく可能性があります。

 先に上げた様々なリスクをカバーしながら挑戦するしかないと思います。

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