アベノミスクの本質は何か
(慶応義塾大学ビジネススクール小幡績准教授)
今日は、慶応大学ビジネススクールの小幡績准教授との勉強会でスタート。小幡先生は、財務省の後輩ですが、クールな正統派経済学者です。マーケットにも詳しいので、ブログなどを拝読しいつも参考にさせてもらっています。
今日は、2014年の経済や金融市場の見通しに関して、意見交換しました。
小幡先生の見立ては、2014年は停滞と退屈の年。財政赤字や貿易赤字のリスクは溜まっていくが、何とか持つのではないか。問題はむしろ2015年だということです。
また、日米の金融当局は市場におもねらないので、あくまでも実体経済を中心に政策を展開するだろう。今の市場の乱高下はマーケット参加者の自作自演だと冷静な分析をしていました。
その中で、アベノミクスへの評価と言う点で意気投合しましたので、ダイジェストしておきます。
第1に、リーマンショック後の行き過ぎた悲観論に対する「ショック療法」としては、成功したことを認めます。過度な円高の修正と、安過ぎた株式市場の修正は評価すべきです。
株価については、16兆円の外人投資家の買い越しと、日本の機関投資家6兆円、個人投資家9兆円の売り越しによってできた高値なので、どう評価するかは別として、ショックを与えたことは認めるべきでしょう。
第2は、アベノミクスは、要すれば「ポピュリズム」であり、コスト先送りの金融政策と需要先食いの財政政策ならば、目先は誰も困りません。その「時間稼ぎの間に、第3の矢の成長戦略」とは言ううものの、規制改革も不十分で、その効果は不透明です。
第3は、「日本を取り戻す」というスローガンの通り、これまでの古い投資主体や経団連的な輸出主体の製造業、さらには賃金アップの恩恵を受けられる大企業の正社員といった、既得権益への利益誘導だという点です。
新しいイノベーションを起こして、日本の産業構造を変えるのではなく、これまでの経済主体の寿命を10年伸ばすことが目的化しています。
確かに、短期的な政策としては効率の良いやり方かもしれませんし、選挙対策上も賢明なやり方でしょうが、財政赤字と貿易赤字のリスクが高過ぎます。
魔法のような成長戦略を政府が行うことが難しいという「不都合な真実」を直視して、まずは財政規律を取り戻すことが、アベノリスクの高まる2015年対策なのではないでしょうか。