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2010年8月22日

欧州通貨同盟(EMU)について

 今回、ギリシャ危機を受けて、ユーロ圏の経済、金融市場の動向を調査していて、99年のユーロ導入前、国際金融局のアジア通貨室長として、現地調査に来たことを思い出しています。

 現地調査の良さは、直接、担当者と議論することで、顔色や声の調子などから本音を聞き出せますから、紙の資料だけで研究するよりも立体的な情報を得られることです。

 その時の、一番のショックは、インタビューした政治家、官僚、民間エコノミスト、金融界のビジネスパーソン達が、全員同じことをしゃべったことです。

 「なぜ、長い時間をかけて、失敗もありながら、ヨーロッパの域内で共通通貨を立ち上げようとしたのか?」

 この私の問いに、次のような答えが100%、同じように返ってきました。

 「それは簡単だ。私たちは二度と戦争をしたくないと決意した。ヨーロッパが一つの国となり、戦争をしないための通過点がユーロなのだよ。」と。

 当時から、金融はヨーロッパ中央銀行で一元化しながら、財政自主権を各国政府に認めれば、ギリシャ危機のような問題が起きることが指摘されていました。いわば、今回の危機は想定の範囲内です。

 しかも、人口1100万人程度、GDPでユーロ圏の2%しかないギリシャであれば、ドイツをはじめ、EU諸国やIMFの支援で、当面はしのげます。大手金融機関も、4割くらいの債権放棄はおり込み済みのはずです。

 問題は、人口4600万人のスペインやポルトガルなど、周辺国への伝播のおそれです。

 しかし、今回、「戦争をしたくない」という強い政治的意志の下でつくられた通貨同盟はびくともしていません。

 また、緊縮財政と構造改革の実施は、ユーロ圏周辺国には経済的な利益になるという強いコンセンサスもあります。 

 ドイツ中央銀行でも、ヨーロッパ中央銀行でも、彼らが非伝統的な金融政策を使いながら、必ず周辺国を救うという強い責任感を感じました。

 ひるがえって、日本国内にはまだまだ、財政再建と経済の構造改革の緊急性や必要性のコンセンサスがありません。

 そのようなメッセージをどうすれば国民に伝えられるか、じっくり考えます。

 明日からは、ギリシャ政府そのものの対応や債務不履行のリスクなどを検証します。公務員の賃金カットや年金水準の切り下げ、増税など、明日は我が身と考えていますから。

  

フランクフルトでの調査初日

2010年8月21日

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ギリシャ危機の背景

2010年8月23日