なぜ世界は不況に陥ったのか
(池尾和人、池田信夫共著「なぜ世界は不況に陥ったのか」日経BP社、2009年3月)
池尾さんは金融の専門家で、財務省のいろいろな審議会や研究会でご一緒しました。省内の研究所にも客員研究員で在籍されていたこともあり、理論家であるとともに現実的なアプローチも得意な方です。
池田さんは、NHKの出身でIT分野の専門家です。私が、経済産業省に出向して情報処理システム開発課長をしていた頃からのお付き合いです。IT業界の内情や技術的なことを教えてもらいました。私が国際大学GLOCOMの客員教授をしていた頃、彼も同じ大学に籍を置いていましたので、よく議論をしました。
それはさておき、この本は、これまでの30年間の経済や産業の動きと、その背景になる最新の経済学の理論やそれまでの流れを理解するには最適の教科書です。
私の中央大学大学院での講義にも使います。
日本での不良債権処理の歴史は、今回のアメリカの金融危機では何ら参考にならないことなどを指摘しています。
日本でのバブル崩壊は、「伝統的な銀行中心の間接金融体制の下」での問題。銀行が持っている不良債権は資産査定が可能です。
一方で、「アメリカの場合には、きわめて高度かつ複雑に発展していた重層的な市場型金融の仕組みの下」の問題。サブプライムローンという質の悪いローンを何層にも証券化した商品が出回ったため、誰も損失を特定できなくなったのです。しかも、そのために使っていた格付という市場のインフラが機能不全になったため、市場そのものが破たんしたのです。
銀行の不良資産だけに問題が限定された日本の経験は、役には立たないのです。G20などで、「日本の経験を参考にしてもらいたい。」と豪語していた麻生首相には耳の痛い分析です。
その他、マクロ経済政策の歴史的な変遷、その日本と欧米の違いなど、興味深い論点がたくさんあります。
連休中に、一度トライしてみていただいたらどうでしょうか。おもしろい本ですよ。
私たちのために。
私たちの子供たちのために。
私たちの大切な人のために・・・。
信じられない政治に終止符を打つ。
そして、信じられる政治を創るために。