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2021年8月16日

霞が関はなぜコロナに勝てないのか?

デルタ株による第5波の新型コロナウイルス感染拡大が続いています。ワクチン未接種の現役世代の感染拡大ですから、ワクチン接種が先進国並みに進んでいれば防げた事態です。

国全体で緊急にワクチン接種が必要な場合、ワクチンの開発スピード、認可のタイミング、供給量と需要のバランス、配送やワクチンの打ち手など高度なロジステイクスが要求されます。「平時モード」から「危機モード」に切り替えてマネジメントをすべきですが、その能力がありませんでした。

司令塔不在の政治の側にも問題があります。担当大臣が複数いて「船頭多くして船山に上る」状態です。そうだとしても、実務を担う官僚は、政治家に対して、正確に問題点を伝えるべきです。現状は、大臣に言われるままに右往左往しているようにしか見えません。

ただ、あえて弁護するならば、行政改革の名の下、効率優先主義で定員管理が行われ、危機対応のできる体制でないのも事実です。象徴的なのは、近年、無駄だと言われて多くの保健所が閉鎖されたことです。今後は、危機に備え、平時には一見ムダに見えるが実は必要な「一定のゆとり」を持つ行政機構に変えていくべきです。

危機モードへの切替えができず、科学的な判断もお粗末な理由として、法学部中心の人事のあり方が考えられます。

リーガルマインドの本質は、「比較衡量」です。良く言えば、健全な常識に基づいてバランスの取れた判断をすること。しかし、これは「足して2で割る」ことにつながります。科学的な政策判断が苦手な人たちが採用されているかもしれません。

さらに、いわゆる「縦割り」に基づく官僚の視野の狭さです。想像力の欠如と言いかえてもよいでしょう。

作家の大江健三郎氏と米国留学時代親しくさせてもらいました。大江先生との会話の中で、「日本の官僚は優秀ですが、致命的に想像力に欠けていますね」と言われたことを、今でも強烈に覚えています。

危機に対応して、科学的な判断のできる人材を幅広く採用するために、公務員試験制度の廃止も含めて見直すべきです。さらに、偏差値教育による弊害も指摘できます。社会に出れば、誰もが答えのない問いを突き付けられてそれを克服していくわけです。ペーパーテスト偏重の教育制度そのものから考え直す必要がありそうです。

詳しい論考は、8月8日の朝日新聞のWEB論座に掲載した論文をご参照ください。

「あまりにお粗末な東京五輪コロナ対策やワクチン接種 官僚機構にいったい何が?」
https://webronza.asahi.com/politics/articles/2021072200005.html

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