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2021年9月28日

コロナ危機から学ぶこと

デルタ株による第5波の感染拡大はようやく収まりを見せ、緊急事態宣言も解除されることになりました。しかし、今回のコロナ危機で、反省すべき点は何でしょうか。

まず、コロナ病床を増やすことができませんでした。昨年からコロナ患者の数は4倍以上になっていますが、コロナ病床は2倍にしかなっていません。その結果、一時、13万人以上が自宅療養せざるをえなくなりました。毎日、何人もの人が自宅で亡くなり、先進国とは言えない状況に陥りました。

人口比のベッド数は世界最高水準ですが、全病床に占めるコロナ病床の割合は英米の1割以下です。1年半たっても、コロナ専門病院の建設すらできていません。地域医療計画の抜本的な見直しが必要です。

さらに、国産ワクチン開発ができないのはなぜか。1992年の裁判で、予防接種の副作用による死亡に関して国の責任が認められました。そのことがトラウマになった「ワクチン・ギャップ」問題。昨年、米国が1兆円単位のワクチン開発への補助金を支出した一方、日本ではワクチンの開発の補正予算は1000億円程度でした。臨床研究への支援体制のあり方が問われます。

これまでのコロナ対応は、科学的な裏付けのあるものではありません。昨年2月の小中高の一斉休校、国民へのアベノマスク2枚の配布など、今思えば残念なことばかりです。

この間、補正予算の総額は約77兆円。東日本大震災の復興予算37兆円の2倍以上です。21年3月末の予算の執行額は、医療関係が約4兆円に対して、GO・TOキャンペーンや給付金など医療関係以外が約29兆円となっています。経済対策も重要ですが、まずはワクチン開発やコロナ病床の確保などに資源を集中すべきでした。

今年4-6月期の実質経済成長率は、ヨーロッパが8.3%、米国が6.5%に対して日本はわずかに1.3%と出遅れました、これはワクチン接種のスピードの違いによるものです。

政府の官僚システムが平時モードから危機モードへの切替えができないことや、司令塔不在でコロナに関わる大臣が複数のため、「船頭多くして船山に上る」状況による結果です。旧態依然の公務員試験制度による人材リクルートの失敗と、危機対応のできるゆとりのある行政をつぶした効率優先の行政改革の弊害もあります。

今からでも遅くありません、与野党の壁を越えて、科学的な政策判断のできる体制をつくって、コロナ対策に取組むべきです。まずは医療体制の整備、ワクチンと治療薬の早期開発のために大胆な財政出動をするべきです。その意味で、この一か月、菅内閣がレイムダックになって、補正予算の国会審議もせずに時を失った罪は深いと思います。

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