農協改正法案の問題点ーその3
農協改正法案の問題点を現場の視点から報告します。
6月8日(月)、農林水産委員会地方公聴会が山梨県甲府市で開催されました。
意見陳述人は農業法人経営の三森かおりさん、巨摩農協の小池通義組合長さん、梨北農協の仲澤秀美常務理事さん、農園主で山梨市会議員の深沢敏彦さの4名です。
1.現場の声が反映されていない。
4人の意見陳述人全員が、今回の政府案について、「農協や農業者の現場の意見が反映されていなくて、説得力が無い。」と主張されました。
「旧態依然の農協組織に石を投げた意味はある。しかし、的外れだった。生産者の所得向上が目的だったはずなのに、JA全中の全国監査機構の監査いじりで終わってしまった。」
「政府案にはビジョンがない。自分たちの意見を聞くなら、法案をつくる前にしてほしい。」
これが、農業の現場の声です。
ただし、中澤常務理事さんは、「JA全中は戦略的な指導は一切してこなかったが、事務的なガイドラインを農協に示すという意味はあった。戦略はあくまでも農協自身で考えるべき。」と、JA全中に対して、一定の評価はしていました。
小池さんの巨摩農協は、多角経営に成功し、不採算部門のサービスを組合員のためと割り切って、その上で、大きな利益も出されている組合です。
小池さんは、成功した理由に、「協同組合」であることを強調されていました。
中澤さんの梨北農協は、平成12年から、全農に出した組合のお米を買い取り自力で販売を開始。「梨北米」というブランドで、全量、高い仮渡金で組合員から買ったお米を売っています。
中澤さんは、「農協や系統の組織の維持を考えない。あくまでも、組合員の所得を上げるために農協が存在する。そのように行動することが重要。」とおっしゃり、小池さんも同じ考えで経営されて入るとのこと。
現場で活躍されている皆さんから、政府案が的外れであるという厳しい批判があったことは注目すべきです。
2.農業委員会委員の選定方法変更について。
今回の政府案には、農協法改正だけではなく、農業委員会法の改正も紛れ込んでいます(農地法の改正も。)。
そのこと自体、非難されるべきです。
それはともかく、農業委員会法改正案では、これまで、選挙で選ばれてきた農業委員が、今後市町村長の指名で選ばれることになります。
意見陳述人の皆さんは、この点にも批判的でした。
「首長が任命することになると、激しい選挙で現職首長が落選したら、その人に任命されていた農業委員は辞職することになり、限りなく政治任命ポストになる。」
「選挙の方が、誰もが納得する人が選ばれる確率が高いのではないか。首長の任命では、癒着が起きやすいのではないか。」
「選び方にかかわらず、女性や若者が農業委員になるようにしてもらいたい。」
「重要なことは、農地を守ることが使命であるということが判る農業委員を選ぶ仕組みを作ることである。」
現場のご心配は、首長さんが任命することにより、農業に理解のない首長さんの場合、農地が守られない人選になるおそれがあり、利権的な動きになることです。
今の制度も100%完全に運用されているわけでもありませんから、確かに難しい問題ではあります。
しかし、首長任命に一気に移行するのではなく、現行制度を改善していく方向に努力すべきであることは明らかです。