課税ベースの拡大と法人税率の引下げ。
昨日は、先週に引き続き経済産業委員会で質問に立ちました。
テーマは法人税の引き下げの必要性と合わせて課税ベースを拡大して経済に中立的な政策をとるべきではないかという趣旨です。
衆議院インターネットTVの11月20日経済産業委員会の岸本周平をクリックしてください。ビデオでご覧いただけます。
(岸本)法人税の実効税率を下げることが、企業の国際的な競争力を増すことは明らか。また、法人税減税は資本コストを低下させ、投資を増やすため、日本経済全体の成長を高める効果を持つ。しかし、その一方で、財政規律の問題をクリアしなければならない。
法人税を減税すれば、経済成長することで税収の増加が期待できるから代替財源は必要ないというのは「おまじない経済学」に過ぎない。アメリカ経済では、減税分の半分の税収が見込まれるという実証研究もあるが、財政運営には保守的な姿勢が必要なので、代替財源は用意しなければならない。したがって、国際的には、課税ベースを拡大して、実効税率を下げていくことが原則となっている。
たとえば、ドイツの2007年の税率引き下げにあたって、支払い利子の損金算入の一部制限など、税率引下げに伴う減収額の大部分をカバーする課税ベースの拡大を実施。英国においても、税率の引き下げにあたって、減価償却費の見直しや銀行税の導入など企業課税により財源を確保している。
古くは、1986年のレーガン大統領の税制改革で、法人税についてレベニューニュートラルで投資税額控除などの租特を大幅に縮減し、課税ベースを拡大し、税率を引き下げる法人税改革を実施。この法人税改革は、公平・簡素かつ経済成長を促す税制の良き例だと思うが、経産大臣の見解如何。
ちなみに、レーガン大統領の1期目の税制改革ではラッファー効果などにより所得税と法人税を減税すれば税収が増えるとの「おまじない経済学」によって大幅な財政赤字になった。
(茂木大臣)中長期的には、税としての中立性を保っていくということは必要。しかし、今は、景気を回復させて税収が上がるような措置をとっていくことが必要。企業が収益を上げて、生産や投資を生むような好循環を作って参りたい。
(岸本)我が国では、法人税1%あたり国・地方合わせて4000億円程度の税収であり、仮に5%引き下げようとすれば、2兆円の財源が必要となる。
例えば、租特を全廃すれば、約1兆円の財源が確保できるが、
(1)経産省は、これまでの政策減税の効果の検証を行っているのか?租特透明化法の結果の分析を問う。
(2)経済活動に対して政府がどのように関わるかにもよるが、政府がターゲットを決める政策減税よりも、その撤廃により財源を確保しそれで税率の引き下げを行った方が経済活動に対してニュートラルで効率的ではないか。
トヨタ自動車やキャノンなどの実効税率は相当低くなっている。しかし、減税があるから投資するというわけでもない。長期見通しにより投資をした結果、おいしい減税がおまけでついてくるとう感じ。もちろん、結果として製造業の基礎体力が増すため、政策税制の意味はあるのかもしれない。
しかし、租特を止めて税率本体を引き下げれば、投資減税や研究開発税制の利用の少ないサービス産業にメリットを与える政策になる可能性もあるが、経産大臣の見解如何。
(茂木大臣)租特透明化法によって、研究開発税制や中小企業投資促進税制など広く利用されている税制もあれば、グリーン投資税制のように利用が低調な税制があることがわかった。今後、調査を続けてさらなる剣問いを進めたい。
租税特別措置は、業種横断的でであったり、時限立法であることが重要だと考えている。
(岸本)時間がないのでお答えは結構だが、法人の実効税率を下げても、これまで同様内部留保が積み上がるばかりで、経済への刺激効果は少ないのではないかという議論がある。
中には、内部留保課税や、賃金を上げるように政府が働きかけよとの声もある。パナソニックやシャープが持ちこたえたのは内部留保のおかげであり、倒産によって一挙に雇用が失われることを防いでいる面がある。自由な企業経営に対して政府が関与し過ぎるのは「国家社会主義」的で望ましくないのではないかということを指摘しておく。