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2013年11月12日

三権分立の意味と国会議員の憲法遵守義務

 今年の9月5日、結婚していない男女間の子ども(婚外子)の遺産相続分を法律上の夫婦の子(嫡出子)の半分としている民法の規定が憲法違反であるとの最高裁判所の判決が出ました。

 その後、政府は違憲状態を是正するための法案を準備していましたが、今日、ようやく閣議決定がなされ、この臨時国会で審議されます。

 タイミングが遅れた理由は、自民党の内部で民法改正に反対する声が強く、党内手続きに時間がかかったからです。

 婚外子と嫡出子の差別をしている先進国はありませんし、憲法13条の基本的人権の考え方からすれば、最高裁判所の違憲判決が出る前にも、当然改正されてしかるべきでした。

 実際に、法務省はこの民法改正を行おうとしてきたのですが、自民党の反対で、違憲判決が出るまで放置される結果となりました。

 自民党内の反対の主な理由は、婚外子と嫡出子の差別を止めると、『家族制度を否定する』からというものです。

 それは、それで一つの考え方だと思います。私とは違う意見ですが、そのことを信念に基づいて主張されることには何の異論もありません。

 日本国憲法では、思想、信条の自由も表現の自由も認められています。大いに、論陣を張っていただきたいものです。

 しかし、最高裁判所が違憲判決を出した以上、立法府はすみやかに違憲状態をなくす義務があります。これは憲法上の要請です。

 以下、2013年11月4日付けの日本経済新聞の記事から引用しますが、自民党のいわゆる「保守系議員」と呼ばれる国会議員が信じられない発言をしています。

 この記事に抗議を申し込んだとは聞いていませんから、ご本人たちの真意の通りの発言だと思われます。記事からの引用は『 』で示しています。

 この中で、政務三役の一人が『法改正は婚姻制度の否定だ』と発言。政府の一員が、違憲状態を正そうとする政府の提案を否定することは、即、辞任もしくは罷免に値します。

 『目の前の混乱を回避するために国の根幹を壊していいのか』という発言も何を言っているのかわかりませんが、違憲判決の意味を理解していないものです。

 私が悲しく、情けなく思ったのは次のお二人の発言です。

 『最高裁が何でもかんでも違憲判断していいのか』
 『間違った憲法判断は、国権の最高機関である立法府が否定しないとならない』

 まず、憲法81条は「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。」とうたっています。そうなんです。最高裁は、法律、命令、規則又は処分に関しては、「何でもかんでも違憲かそうでないかの判断をしていい」のです。

 この発言をした国会議員は憲法の条文を知らないか、理解していないことを暴露したことになります。

 二つ目のの発言は、立法、行政、司法の三権分立の考え方をまったく理解していない発言です。中学校の社会の試験でこのような答案を書けば、零点しかもらえません。

 憲法第41条で定められた国会の権能は、「立法機関」としてのものしかあり得ません。国会は憲法判断はできません。最高裁判所が、憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する「終審」裁判所であることは先ほどの81条に書いてある通りです。

 そもそも、権力が集中することによる国家権力の暴走をあらかじめ抑止するために三権分立の考え方が取り入れられてきたという政治史への理解と共感を有していない国会議員がいることに憤りを通り越して情けなさを感じます。

 彼ら彼女らの発言に、国会議員である前に、人間としての知的な退廃を感じます。あるいは確信犯的に、自分の主張にとらわれる余り、立憲主義をあえて否定して見せているのかもしれません。

 それなら、自分の都合の良い時だけ憲法や最高裁判決を引用し、都合が悪ければ否定するという信頼できない人物だということになります。

 日本経済新聞は、彼ら彼女らを「保守系議員」と呼んでいますが、とんでもないことです。

 保守主義とは謙虚さと寛容さを基本とします。憲法をまったく理解していないか、もしくは恣意的に憲法を扱うような政治家は「保守」ではありません。

 ちなみに、憲法99条は「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」と規定します。憲法という国の基本的なルールを守らない「国会議員」は要りません。

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