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2013年6月9日

書経の教え―三徳

(田口佳史先生)

 田口佳史先生から「書経」を教えていただいて、もう11年になります。

 今も、月に一回、輪読の会に参加しています。

 最近の講義の中で、「三徳」というリーダーが身につけるべき三つの徳を学びました。実は、何度も繰り返して読んでいるのですが、毎回、新鮮です。記憶力がないのか、、、、苦笑。

 三徳の1は、「正直(せいちょく)」、2は「剛克(ごうこく)」、3は「柔克(じゅうこく)」です。

 正直とは、清く明らかな心であり、公平にして康らかな状態(平康)。

 剛克とは、義を貫く強さであり、深く考えること(沈潜)。

 柔克とは、和して人と親しみ、道理を見通していること(高明)。

 すべて、難しいことですが、何と言っても最後の柔克が一番たいへんですね。

 中国古典では、三つほど例示して、順番を示すことが多いと思います。

 北尾吉孝著「先哲に学ぶ」(2012年、経済界)の中で紹介されているのですが、明の時代の思想家呂新吾の「呻吟語」の中にもありました。

 リーダーの資質の第一は、「深沈厚重」(深く沈着で思慮深く、厚み重みがあり安定感を持った人)。第二は、「磊落豪雄」(明るく、物事に動じない人)。第三は、「聡明才弁」(非常に頭が良くて、弁の立つ人)。

 これらを三つとも兼ね備えるのは並大抵のことではありません。

 もう一つ思い出しました。田中角栄首相が日中国交回復のために訪中した際、周恩来に試された話です。

 田中首相が周恩来から「言必信行必果」という色紙を贈られました。一見、素晴らしい人物評価なのですが、これは論語の中の「士」の定義の内、三番目で最低の格を表す表現なのですね。

 一番格上は、「行己有恥、使於四方不辱君命(我が身の振る舞いに恥を知り、四方に使いして、主君の命を損なわない者)」、二番目は「宗族称孝焉、郷党称弟焉(一族から孝行者と言われ、郷里の人から悌順(ていじゅん)だとほめられる者)」。

 そして三番目は、「言必信、行必果(言うことは必ず偽りがなく、行うことは潔い者)」ですが、「脛脛然小人也(こちこちの小人(しょうじん)で、まあ士のうちに入れてもいい者)」と言われていますので、周恩来も失礼千万ですね。

 ちなみに、カッコ内の訳は安岡正篤氏先生のものです。

 何にしても、中国の政治家と張り合うためには中国古典を理解しないと馬鹿にされかねません。頑張らないと、、、、冷汗。

「ベトナムの蓮」弦楽四重奏団@高野山金堂

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