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2013年3月14日

官民ファンドの危うさ

(衆議院予算委員会で質問する岸本周平)

 今日は、衆議院予算委員会で質問に立ちました。

 前回は、2月7日の補正予算案審議の場で、テレビ入りでした。今日は、本予算案の一般質疑で、テレビ中継はありませんでした。

 いつもの通り、「衆議院インターネットTV」で録画を見ることができますので、ぜひ、ご覧ください。

 今日のテーマは政府が出資をする官民ファンドのリスクについて、経験談を交えながら、政府を追及しました。

 政府出資の財源は産業投資特別会計です。

 産投特会は、昭和28年、米国対日援助見返資金特別会計と日本開発銀行、日本輸出入銀行への一般会計出資を引き継いで設置されました。

 その後、昭和60年の法改正で、NTT株とJT株を活用した事業が可能になり、一般会計への歳出圧力をかわす為に使われ、財政規律が弛緩しました。

 本来NTT株やJT株の配当収入、売却収入は国債の償還に充てるべきです。産投特会のこれまでの利益累計は3兆4000億円で、その内、一般会計への繰り入れが1兆3480億円ありますが、それも含めて本来すべて国債償還に充てるべきだと思います。

 一般会計の出資金は主に、政策金融機関の低利融資などを可能にするため、財務基盤強化に充てられたり、国際機関の参加持分のようなものです。

 一方で、リターンを求める産投特会の出資に関しては、次の三つのパターンがあります。

・財務基盤強化型
・将来の研究開発成果による資金回収型
・ファンドを通じたリスクマネー供給型

①財務基盤強化型について
 これは、日本政策投資銀行や国際協力銀行などへの出資が主なものです。政策目的のために、財務基盤を強化するものですから、リターンはあまり想定されません。

②将来の研究開発成果による資金回収型について
 これは、次の4法人となりますが、それぞれに出資額と回収額の間に大きな落差があります。

・(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構―出資累計742億円  回収額4400万円
・(独)情報通信研究機構―出資累計716億円 回収額2億4000万円
・(独)医薬基盤研究所―出資累計354億円 回収額750万円
・(独)農業食品産業技術総合研究機構―出資累計351億円 回収額300万円

 4法人へのこれまでの出資額と回収額を比べると、桁が(ケタ)が違いすぎます。

 100億円単位の出資で回収は100万円単位ですから、100分の1のリターンです。研究開発とは言え、お役所のからむ投資は、失敗する宿命にあるとしか思えません。

 この他に、事業の将来性が無く、解散して出資金償却をした(いわゆる毀損)事例の内、上位3者について損失額は次の通りです。その他にも10法人で383億円の損失が発生しています。

・基盤技術研究促進センター 2684億円
・(独)情報処理推進機構 377億円
・情報処理振興事業協会 142億円
・その他 10法人 383億円

 何と巨額なのか、唖然(あぜん)とします。ドブにお金を捨てるようなものです。

 しかも、これらの法人にはこれまで大勢の天下り官僚がいて、人件費をがぶ飲みしていました。民主党政権になって、独立行政法人の役員は公募にした上、天下りのあっせんを禁止しましたので、現役出向以外に官僚出身はほとんど残っていません。しかし、現役出向も止めるべきですし、そもそも独立行政法人も廃止すべきです。

 民主党政権時代に独立行政法人廃止・合併の法案を出しましたが、当時の野党が反対して日の目を見ることができませんでした。

③ファンドを通じたリスクマネー供給について

 このような惨状にある政府出資のプロジェクトを横目に、リスクマネー供給のための官民ファンドが作られています。既存ファンドの中では、(株)農林漁業成長産業化支援機構には問題があります。

 預金保険機構が主な株主である産業再生機構や企業再生支援機構は再上場で資金回収ができました。しかし、(株)農林漁業成長産業化支援機構は農業分野に特化したファンドであるため、出口戦略が難しい。上場やM&Aで回収するのはとても難しいと思います。配当収入だけでよいのなら、融資でもよいのではないかと批判されてもしかたありません。

 平成25年度予算で新規ファンドとして提案されている(株)海外需要開拓支援機構(クールジャパン推進機構)への政府出資予定額は500億円です。官民ファンドと言いながら、民間資金はまだ100億円程度しか目途が立っていません。

 実は、私は2001年1月の政府の機構改革により、経済産業省の初代メディア・コンテンツ課長に就任しました。10年以上前からクールジャパンを推進してきた人間なので、情としては、このファンドは応援したいのです。

 応援団として、成功してもらうためにこそ、問題点を指摘します。

 何より、このようなファンドは人材がすべてですが、本当の目利きが採用できるのか?

 既に多くの民間企業は自力でリスクを取って海外進出を果たしており、政府を頼ることで、モラルハザードとなるだけではないのか?

 たとえば、吉本興業は10数年前から韓国や台湾に現地法人を設立。ファンダンゴコリアなどインターネットテレビのビジネスモデルを確立しています。

 その後も、台湾の衛星放送「東風衛視」に事業参入(2012年5月)、上海メディアグループとの合弁会社による放送番組の制作を開始(2011年10月)。

 また、金門島での日本産品の物販事業「ご当地市場」実施予定(2013年7月)。既に、海外事業への出資等に約17億円を投じています。

 自分でリスクを取るからこそ、ビジネスとして成功するのではないでしょうか?

  最後に、麻生財務大臣にお聞きしたのは、「いくつかの官民ファンドを通じたリスクマネー供給に関して、失敗した場合の責任は誰が取るのか?」ということでした。

 麻生大臣は「主務官庁」が責任を取るべきと答弁されました。

 私は、「主務大臣はコロコロ変わるし、担当課長だって、2年か3年で変わる。むしろ、ファンドの責任者がきちんと責任をとるような仕組みをつくることがモラルハザード対策として重要ではないか。」と指摘しました。

 以上のように、官民ファンドにはいくつかの問題点はあるわけですが、実際に予算が執行される以上、少しでも良い方向で成果を上げるように、議会の側からチェックしていきます。

版画家山本容子さんと和医大樋口隆造准教授

2013年3月11日

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