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2013年3月4日

牧宥恵さんとの対談

 仏画師牧宥恵さんとの対談、「混迷する時代にどう向き合うか」。和歌山大学経済学部教授の足立基浩教授をコーディネーターに討論会をしました。場所は和歌山市のフォルテワジマ・ イベントホール。立ち見も出るような盛況でした。有難うございました。

 3月7日(木)の毎日新聞和歌山版の朝刊に掲載される予定ですが、ダイジェスト版を以下、要約します。

(足立) 2012年の総選挙は民主党が大きく負けて、自民党が躍進しました。一方で第3極という動きも出てきました。有権者は何を選択したのでしょう。

( 岸本) 投票率は下がっているし、自民党の得票も下がっているので有権者が自民党に 戻ったわけじゃない。ともかく民主党をやっつける選挙だった。2009年の選挙で期待感があった。それがものの見事に裏切られた。期待した気持ちが強い分、憎しみが大きくなったのではないか。

 政治とは政(まつりごと)ですので、感動がなければ人は動かない。投票率を上げるためには、もっとエキサイティングで夢ある政治でなければならない。

(牧) 民主党は本当に運が悪かった。僕らは東日本大震災のことを風化させてはいけな い、と真剣に思っている。ところが「もう2年前のこと」になっているところもある。

 原発にしたって、戦後つくるだけつくってきたのは自民党なのですよ。「想定外」という言葉もあったのに、今じゃだれも使いませんよ。民主党が、初めてのことに手を付けようとした時に自然界から大なたを振るわれた。その後に放射能という形でどんどんツケがまわってきた。対応できかねる体になったところに自民党、第3極に突っ込まれた。

(足立) 安倍首相の経済政策「アベノミクス」の評価はいかがですか?

(岸本) アベノミクスは、端的に言うと金融を緩めて財政は借金してお金をばらまくと いう考え方なので、すごく心配です。新政権は、物価を2%上げることを目標にして 一生懸命になっている。でも物価だけ上げても景気はよくならない。

 サラリーマンの平均年収は、この10年で40から50万円下がっている。だけど物価も下がっているからそれほど不満ではない。物価を上げて、給料も上がれば問題ないが、政府がいくら言ったって給料は上がりません。

もう一つ問題は、物価が上がれば金利も上がる。すると銀行は、昔買った安い金利の国債を一斉に売ります。国債は益々値段が下がり、金利は上がりますから銀行は破綻します。これがギリシャ危機です。一方、その国債を買いまくらざるを得ない日銀は、インフレを止める機能を失ってしまっているので物価が上がったときに対応できない。アベノミクスは、実は出口戦略がない、冒険主義なのです。保守政治家がする政策としてはいかがなものか、と思う。

(牧) 今ご指摘あったように、アベノミクスの3本の矢は政策的に問題があるのに、雰 囲気が株価を上げている、といってもいい。ただ安倍さんに変わってから、一生懸命強い経済政策を打ち出しているから、というムード的なものもあるんじゃないですか。

(足立) 和歌山の活性化、元気にする方法について考えを聞かせてください。

(岸本) もはや大企業や産業を引っ張ってくる時代じゃない。元気の良い若者に気の利 いたビジネスを始めてもらう、これを応援していく方が早い。和歌山はNPO活動は盛んだし、気候も良いので地場の雰囲気は悪くないんですから。

(足立) 和歌山県の特徴あるデータとして、1~4人までの企業が全国一で多く、100~200人の企業は全国的に一番少ないんですよね。岸本さんの言うよう、小さい 企業に活力を与えることで元気が出るといった考えはあるんじゃないでしょうか。

(牧) 時代とともに社会構造は変わっている、ということは認識しましょうよ。小さい 会社は何とかやっていけるということは、ちょっとずつ考えていけばできることはあると思うんです。どうしてこうなったのか、そのためにはどうしたらいいのか、己自身が考えないと伸びない。賢くなろうよ、ちょっと考えようよ、と思うんですよね。

(足立) 最近、国会でも議論になっているのが道州制です。考え方を聞かせてください。

(岸本) 制度を変えることには疑問。道州制にするには膨大なエネルギーが必要で、これから何年もかけて議論することになるでしょう。でもそんな議論をする暇があるなら国の仕事やムダを減らした方が良い。制度を変えるとバラ色になるという議論には疑問です。

(牧) 僕も賛成。たとえば小泉政権の時はどうだった。今、郵政問題を語っている人がどれだけいますか。制度なんてそんなもん。この国はシルバー向けに制度をつくりすぎ。だれが映画観るのに1000円にしてくれ、と言った。保険制度なんかでも、若い世代の負担は3割です。この国は年寄りに手厚く、子どもたちに無理強いしている。

(足立) 尖閣諸島、竹島、北朝鮮をめぐる問題とか、日本を取り巻く国家間の問題は10年前とは比べものにならない状態になってきている。日本はどういった立ち位置をとるべきなのでしょう。

(岸本) 領土の問題は、みんな言い分があるんです。日本から言わせれば日本固有の領土。私もそう思いますし、出るところに出ればそう主張すべき。しかし、他国から言わせれば、日本と同じで自分たちの言い分がある。そうだとすると、近所に住んでるんですからお互い様、大人の対応はできないものか。

 たとえば漁場や資源を共同利用できるような知恵が出せないか。ただ竹島問題は約束を破られているのでそこは堂々と主張すべきですけど。今、自民党は憲法を変えて国防軍を持とうとしている。一方、あって然るべきリベラル保守の軸がなくなってしまっているんです。

 だから今は、リベラル保守を代表する勢力を打ち立てる以外に日本の政治を健全化する道はないんじゃないか、という思いがあります。その立場から国益を定義し、領土問題にも関わっていくべきではないでしょうか。

(牧) 僕は仏教徒ですから、経済至上主義的な愛国論は勘弁してほしい。キリスト教は右の頬を殴られれば左の頬を出せ、仏教やガンジーはそれ以前に無抵抗でいけ、と言っている。そうなると犠牲者が出るじゃないか、という議論になります。向こうから攻められれば誰かが死ぬ。それでも「うん」と言っていける国をつくれば、1000~2000年後には日本国は竹島・尖閣では武器を交えなかった、という歴史が残る。

 一方、一緒になって舞い上がってあの小さい島は我々の国だ、自衛隊行かせろ、アメ リカ軍手伝いにこい、ということをやって意味があるのかを考えてほしい。

(足立) どういう生き方が豊かに生きることなのでしょうか。和歌山で豊かに生きていくためのアドバイスはありますか。

(岸本) 私のリベラルの定義は、「価値観の多様性を認めること」なのです。私は保守系なのでリベラル保守の政治家を目指したいと思っています。その意味でいうと豊さとは経済的な意味ではないと思う。

 ちょっと恥ずかしいですが、父がずっと言い続けたことがあります。それは、人間は何のために生きるのかということ。父からは「昨日知らなかったことがきょう分かる、きょう理解できなかったことが明日理解できる、その喜びのために生きるんだ」と教えられてきました。私も今そう思っています。

(牧) リベラリズムは慈悲心、相手をおもんばかること。その「ばかる」は測りなのですね、相手が何者か分かった上で自分の責任において救っていく、もしくは救われていく関係を慈悲といいます。その上に立って和歌山での暮らし方を思うと、自分が自信をもって住んで良かったな、と他人に伝えられるかどうかだと思う。

(足立) 今後の抱負と夢を語ってください。

(岸本) 今、右寄りの考えで自民党はまとまっている。しかし、国民の選択肢として、吉田茂流の軽武装で、日米中心で、経済を重視する、という勢力をつくっていかないといけない。日本の民主主義を進めていくために、私はこのリベラルの勢力をリードしていく政治家として今後の人生を歩んでいきたい。

(牧) 仏教の教えは普遍だと思っています。いつどこで誰が見ても正しいことはあるとっています。自分の生き方が無駄だった、生きていて何の足しになるんだと思うんですけど、本当の贅沢っていうのはその無駄にどれだけ時間をかけられるかだと思うんです。だから僕は無駄なことに労力を惜しまない。最後の最後に「あっ無駄じゃななかったんだな」と思えるような考え方をしてほしい。そこには政治や芸術や経済など全部絡んでくる。だから僕は、雑巾という言葉があるよう「雑人」でいたい。色んなものに興味あり、それでも納得がいかなくて、思い悩みながら雑人は雑人なりの生き方がしたい、と思っています。

岸本周平後援会主催「新春感謝の集い」

2013年3月4日

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2013年3月7日