衆議院予算委員会での質問
今日は、衆議院予算委員会で質問しました。一昨日の代表質問の続きです。以下、概要を書き留めます。NHKで生中継されましたが、まだご覧になっていない方は衆議院のインターネットテレビでどうぞ。
1.金融政策の出口戦略について(対総理)
代表質問でも聞いたが、日銀が財政ファイナンスをしている今の状況が続くと、物価が上がり始め、それに伴って、金利が上昇を始めると出口戦略が相当難しくなってくる。
今でも、すでに日銀が財政ファイナンスをしているとも言える。
基金による資産の買い入れは、これまでにすでに約40兆円。長期国債や国庫短期証券で30兆円を超えている。今年の目標は、長期国債で20兆円、国庫短期証券で15兆円の積み増し。
これまでの議論は、この基金の資産買入れに関して多い、少ないという議論だけ。総理は先ほど、日本のデフレは貨幣現象そのものを要因とするとの認識を示した。
その認識の前提となる金融システムの基礎的な事実関係をおたずねする。
日銀は、今、指摘した基金の資産買入れ以外でも、定期的に長期国債を購入している。いくらぐらい購入しており、そもそもその理由は何か、総理はご存知か?
日銀は、毎月定期的に長期国債を購入している。今は、毎月1.8兆円、年間21.6兆円。2009年3月までは毎月1.4兆円、年間16.8兆円だった。
経済が成長すると、通貨、つまり日銀券の流通が増えていく。日銀券は日銀にとっては負債だから、一方で国債という資産を持たねばならない。別の見方をすれば、経済が成長していくために、国債を買って成長マネーを供給しなければならないという説明がされる場合もある。もっとも、この10年間、名目GDPはマイナス成長だから、成長マネーを毎年21.6兆円供給する理由はない。金融緩和の一助としている。
今年は、日銀は長期国債だけでも42兆円以上購入する。これは新規発行の国債を全額日銀がファイナンスしていることに等しい。
総理は、昨年、建設国債を日銀に直接引き受けさせると発言し、非常識との批判を受けて、前言を撤回されたが、市場からとは言え、日銀は莫大な財政ファイナンスを行っている。このこと自体、財政規律を大きく損なっているし、デフレが貨幣現象だけで説明できないことを物語っている。
2.財政赤字拡大による非ケインズ効果について(対総理、対財務相)
1995年以降生産年齢人口(15歳―64歳)は減少し、2011年にはピーク時より7%減っている。2010年代も毎年1%ずつ減少していく。一人あたりの生産性が1-1.5%上昇しても、人口が1%ずつ減れば、経済全体の生産性は0-0.5%しか上昇しない。これでは、いくら金融緩和を行ったり、財政をばらまいても経済の成長は見込めない。しかし、人口動態の変化の他にもデフレの要因がある。
それは非ケインズ効果と言われるもの。甘利大臣、非ケインズ効果を説明してください。
日本における非ケインズ効果には二つの側面がある。一つは、多くの現役世代が社会保障制度の持続可能性に不安を抱き、消費を抑制しているという面。高齢化の要素を除いた貯蓄率は下がるどころか、この10年間は上がっている。その将来不安を払しょくするために、民、自、公の三党合意に基づいて社会保障と税の一体改革を行ったことはご存じの通り。
もう一つの非ケインズ効果は、財政赤字が民間の純貯蓄を食いつぶし、その結果、民間の資本蓄積が阻害されている点である。2009年度以降、民間の純貯蓄よりも政府の財政赤字が上回り、「国民純貯蓄」はおおむねゼロとなった。戦後、先輩たちが一貫して積み上げてきた富の蓄積過程はすでに終わっている。
また、このこととほぼ期を一にして、2008年度以降、民間の総固定資本形成は固定資本減耗を下回り、純資本ストックも減少に転じている。簡単に言い直せば、民間部門では、減価償却の方が新規投資よりも大きくなっているということ。
だからこそ、成長戦略を!ということになる。野田内閣でも、日本再生戦略をつくり、今、安倍内閣も三本の矢の一つとして取り組もうとしている。そして、それは規制改革に歯を食いしばって取り組み、経済の生産性を上げるほかない。TPPも受け入れるべきだし、自民党はしたたかな政党だから、きっと最後はなさると思う。「関税撤廃に例外を作れば、交渉に参加する。」と総理も言っている。
しかし、そのためにも財政赤字を減らさなければならない。日銀が完全にファイナンスしている国債市場は日本の金融機関には魅力的。将来不安で消費を抑制し、老いも若きも貯金をし、そのお金で銀行は安心して国債が買える。銀行が、わざわざ成長分野や企業を掘り起こし、リスクを取って貸し出しを増やすよりも、国債に投資する方が有利になっているのではないか。
経済の成長期待が低下し、民間の資金需要が低迷し、銀行が国債投資している面もあるだろうが、逆に、国債への投資が優先され成長分野に資金が回ってこなかったおそれもある。この悪循環による低金利状況が、物価の上昇や、財政規律維持への不安から金利上昇に転じた時の出口戦略が困難であることは本会議で指摘した通り。
3.金利上昇による利払い費の増高について(対財務相)
そこで、物価が2%になる世界では、国債の金利は何%くらいを想定されているのか?総理と財務大臣にお聞きする。
今の10年物の利回りは0.7%台。物価がゼロ近辺。仮にこのまま、単純に伸ばせば、物価2%では利回りは3%程度。仮に、出口戦略などに不安があってリスクプレミアムがつけば3%を超えてくる。
今の市場のような、「株高の債券高」は中長期的には両立しないので、株価の一段の上昇を望めば、債券価格が下落、つまり、金利は上昇せざるを得ない。
野田内閣時代には、1%国債金利が上昇すれば、利払い費は、1年目、1兆円。2年目2.4兆円、3年目4.1兆円増加するという試算があった。2%の上昇では、それぞれ、2兆円、4.9兆円、8.3兆円となる。
財務大臣、金利が2%上昇した時に、予算が組めるのか?
これは、平成25年度予算の後年度歳出・歳入への影響試算をいただいてから、じっくり議論する。しかし、金利が上昇して利払い費が増える場合には、将来推計として、バラ色の経済成長率を置き、税収を蹴上げてフレームを作るというのがこれまでの財務省のやり方である。
政治家はどうしても財政規律を緩めるように行動しがち。だから、後程述べるが、各国は財政責任法で政治家の枠をしばっている。たとえば、英国の「2011年予算責任及び会計検査法」では、予算の基礎となる経済見通しへの財務大臣の政治的影響を排除して、その信頼性を高めるために2010年に新設された独立の「予算責任局」を法定した。「予算責任憲章」に基づき、予算責任局は財政の持続性を検証し、議会に報告することになる。
4.経済財政の中長期試算について(対総理、対甘利国務相)
このような議論をするときに、「経済財政の中長期試算」が必ず必要になってくる。昨年の野田内閣では、1月24日に発表して予算審議に供した。甘利大臣、安倍内閣の「経済財政の中長期試算」はいつ出すのか?
安倍総理は、「財政規律は極めて重要であると認識しており、プライマリー・バランスの黒字化を目指す。今後、来年度予算編成について、日本経済再生と中長期的に持続可能な財政措置の双方を実現していく道筋を検討していく。」と述べている。安倍総理の発言と矛盾する。
5.補正予算の各事業にかかる費用対効果分析について(対総理、対財務相)
安倍総理は、去る1月11日の記者会見で、「予算の中身をガラス張りにして、費用と効果の比較を見えるようにする。」と言っている。ぜひとも、補正予算の各事業の費用対効果の予測を出してください。予算審議にあたり重要な資料。バラマキではないことを証明するためのデータ。財務省は、費用対効果をみて予算を査定したはず。事前にデータを出さなければ、評価はできないし、安倍総理が言う
ような「ガラス張り」にはならない。
6.財政責任法について(対総理、対財務相、対谷垣国務相)
諸外国で成功した財政再建の経験を調べると、共通することが含まれている。きちっとした法的な枠組みを導入し、財政規律を守ることについて、政治的なコミットメントを確保する仕組みがある。
総理が記者会見で、単に、「財政目標は守ります」といっただけでは、財政規律は守れない。しかし、与党ではなく、野党だったときの自民党は、良い提案をしている。自民党は、平成22年3月、財政健全化の道筋など明記した「財政責任法」を国会に提出。
私自身は、こうした法制化は極めて重要と考えていたが、当時は政府内にいなかったので、関わることはできず、残念。
そこで、財政責任法に関する最初の質問として、財政問題に見識のある谷垣法務大臣にお尋ねします。法務大臣としてではなく、誰よりも財政規律を重視している一政治家として、そしてこの法律を提案した当時の自民党の責任者として、自民党が提案した財政責任法の意義及び重要性をお聞かせください。
以上。