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2013年2月5日

衆議院本会での代表質問

 今日、国会議員になって初めて、本会議場で代表質問をしました。平成24年度補正予算財政演説に対する代表質問です。

 以下、本文を再掲します。衆議院のインターネットテレビでいつでも見られますので、ぜひとも、ご覧ください。

 まず、安倍新内閣の船出を祝福するとともに、私は経済財政運営の成功のために責任野党として、協力すべきは協力したいと思っていることを、ここにお伝えしたいと思います。1月22日に政府と日本銀行の政策連携が成立し、デフレ脱却と経済成長のための共同声明が発表されました。私は、この合意を高く評価したいと思います。足元の円安傾向や株価の上昇によって、企業マインドは改善しています。私は、政府・日銀の経済政策運営が効果を発揮し、日本経済が持続的な成長軌道に乗ることを期待しています。

 しかし、その上で、政府が中央銀行の独立性を侵すことがあってはならないということと、金融政策の出口戦略が相当に難しいものであるということの2点だけは指摘させてください。

 現行の日銀法は、過剰流動性やバブルにおけるマクロ経済政策の誤りを繰り返さないために、平成9年、戦時立法であった昭和17年制定の旧法を改正したものです。その時に、欧米先進国並みに、日本銀行の独立性を強化し、その政策運営の透明性を確保するために、大蔵大臣の総裁罷免権を廃止する一方、政策委員会の議事要旨、議事録の公開等を決定したものです。当時、与野党を巻き込み、長い時間をかけて結論を得るに至った経緯は、安倍総理におかれても十分に認識されておられることと存じます。

 政治と中央銀行の対立の歴史を踏まえ、洋の東西を問わず、先人の知恵として独立性のルール作りが行われてきたものです。したがって、内外から、日本政府が中央銀行の独立性を軽視するような印象をもたれることは決してあってはなりません。

 既にGDP比で245%の巨額債務残高(IMFによる一般政府ベース、2013年)を有する日本の国債の信任に悪影響を及ぼします。中央銀行の独立性に関する総理のご認識をおうかがいします。

 また、2%の物価目標は、当面、かなり高いハードルであるとの認識がありますから、ただちに金利への影響をもたらすことにはなりません。しかし、実際に、アベノミクスが成功し、2%の物価上昇の実現性が高まってくれば、当然、国債の利回りは上昇して参ります。その前に、補正予算でのバラマキなどにより財政規律に不安が生じれば、ジリジリと市場は高い金利を要求してきます。国債の利回りが上昇し、国債の価格が下がってきますと、大量の国債を保有している日本の金融機関は含み損を抱えることになり、国債の売却を余儀なくされます。その際には、国債価格を維持するため、日本銀行は国債を購入し続けるほかありません。しかし、そうなりますと、2%を超えて物価が上昇し始めても、急に金利を引上たり、市場への資金供給を絞り込むなどの金融引き締め策が取れなくなります。インフレファイターたる中央銀行の機能が果たせなくなるのです。いったい、この金融政策の出口戦略について、安倍総理はどのようにお考えになっておられるのでしょうか?物価2%になるまで、今の金融緩和策を続けるべきだとお考えでしょうか?

 次に、財政関係についてお尋ねします。

 財政については、24年度補正予算など、これから実行していくものなので、現時点では、その成果を直ちに評価することはできません。しかし、3本の矢の一つとして、「機動的な財政政策」と言っておられます。いかにも、もっともらしく聞こえますが、実際の予算編成に携わった私自身の経験から申し上げれば、この言葉には強い懸念を覚えざるを得ません。つまり、「機動的」という言葉は、「何でもあり」の免罪符になっているからです。

 霞が関の実態を知っている私には、残念ながら、信じられないのです。昨年12月26日に政権が発足してから、わずか3週間程度で、真に効果のある事業を選定することなどできるのでしょうか。24年度補正予算の中身は、年度末のどさくさで、枯れ木も山のにぎわいだと感じています。25年度の当初要求の肩すかしも多く、とにかく最初に金額ありきで、これまで認められなかった予算のオンパレードです。しかも、その財源の主力は借金で、将来世代につけを回すことになります。

 私自身予算に携わってきた者として、自戒を込めて申し上げれば、日本で財政規律をダメにしている元凶(げんきょう)は補正予算です。補正予算そのものがダメだと言っているのではありません。補正予算にはシーリングが適用されないので、今申し上げましたように、当初予算に計上できなかった予算を補正に回すなど、どうしても予算制約が甘くなるからです。まして、今回のように、10兆円とか、20兆円とか、そういうオーダーになると、ますます財政規律は低下します。このような追加財政は国債発行による「将来の所得の前借り」に過ぎないことを安倍総理はどのようにお考えですか?

 また、年金などの義務的経費を過少見積りして補正回しにすれば、当初予算の国債発行額を小さく見せることもできます。ちなみに、今回の来年度予算のように、経済成長率の過大見積もりをして税収を水増しし、年度途中の補正予算で国債発行を増やす方法も自民党政権の常套手段です。まさに、いつか来た道です。

 90年代のバブル崩壊以降、幾度となく経済対策が講じられてきましたが、経済は依然として低迷しています。残ったのは将来の子ども達への借金の山です。経済再生、成長戦略、そのための財政措置など、文章ではかっこいい言葉が並びますが、これまでの経済財政政策の検証や反省なしに、同じことを続けても、何が変わるというのでしょうか?

 足元の予算編成だけではなく、日本の財政は更に深刻さを増しています。第一次安倍内閣が作った平成19年度の一般会計当初予算の新規国債発行額がいくらだったか、安倍総理は覚えておられますか。約25兆円でした。しかし、それが今年度の補正後では倍以上の52兆円です。

 もちろん、我々民主党にも、3年間の政権担当時に借金を拡大させた責任があります。しかし、元を正せば、長年にわたり借金の山を築いてきた責任は自民党にあります。第二次安倍内閣は、「機動的な財政政策」の名のもとに、さらに子どもたちに借金をつけ回そうとしています。

 私は、景気対策を全く否定しているわけではありません。しかし、先の緊急経済対策、そして、安倍総理のご発言からは、日本の財政の将来、そして合意もなく負担を押しつけられる子どもたちへの真摯な思いが全く感じられないのです。

 昨年末の初閣議で、総理は、「今年度補正予算については公債発行額44兆円枠にこだわらずに、思い切った規模とする一方、来年度予算については、財政健全化の目標を踏まえたものとする」とおっしゃっています。たとえは悪いですが、医者から減量しなさいと指導されながら、「半年後には我慢して節制するから、それまでは甘いものなんでも食べていいよね。」と言っているようなものです。それで、本当に財政健全化ができるなどと一体誰が信じるでしょうか。

 今回の規模の補正予算に匹敵するのは、麻生政権における21年度補正予算です。一般会計の歳出は約15兆円追加され、特別会計の歳出も10兆円超が追加されています。この補正予算で大きな問題になったのは基金です。46もの基金がつくられ、約4兆3000億円が計上されました。

 実は、今回の補正予算でも、「官民ファンド」がいくつもつくられます。「ファンド」とは、日本語では、「基金」です。しかも、今回のファンドは出資金という位置付けです。出資金という名称になったとたん、建設公債の対象となるのです。リスクをとるのが官民ファンドだと思うのですが、もし失敗して資産がなくなると、借金だけが残ることになります。道路などのインフラであれば、仮に利用者が少ないとしても、まだ資産が残るので、建設公債で賄うことが正当化できるかもしれません。しかし、出資金は失敗すれば、消えてなくなります。官民ファンドを出資金、すなわち、建設公債で賄うことの妥当性とは何でしょうか。赤字公債で賄うと批判されるので、建設公債とするまやかしではないでしょうか。麻生財務大臣お答え願います。

 誤解のないように申し上げますが、私は政府がリスクをとってはだめだと申し上げているのではありません。建設公債で賄い、さも資産が残るかのように説明することは、国民をだますものではないかと申し上げているのです。失敗して、資金が消えた場合、誰が責任を取るのでしょうか。

 安倍総理は、去る1月11日の記者会見で、「予算の中身をガラス張りにして、費用と効果の比較を見えるようにする。」とおっしゃっています。それなら、ぜひとも、補正予算の各事業の費用対効果の予測を出してください。いかがですか?予算審議にあたり重要な資料です。バラマキではないことを証明するためのデータです。財務省は、費用対効果をみて予算を査定したはずです。簡単です。事前にデータを出さなければ、評価はできませんし、安倍総理がおっしゃるような「ガラス張り」にはなりません。

 また、安倍総理は、同じ記者会見で、「財政規律は極めて重要であると認識しており、プライマリー・バランスの黒字化を目指す。今後、来年度予算編成について、日本経済再生と中長期的に持続可能な財政措置の双方を実現していく道筋を検討していく。」と述べておられます。

 一方で、甘利大臣は、中長期の財政目標は参議院選挙が終わるまで当分出さないとおっしゃっていますが、これは明らかに総理の発言と矛盾しています。安倍総理は2020年度までにプライマリー・バランスを黒字化するとのこれまでの歴代内閣の目標を捨て去られるのですか?守られると言うのであれば、それは達成できるのでしょうか。

 今回の補正予算や来年度予算だけではなく、自民党は、マニフェストで様々な施策を約束しています。いったいいくらの追加費用がかかるのでしょうか。マニフェストの約束を実行するために予算を際限なく増やすのか、財政を再建するのか、いったいどちらなのでしょうか。あるいは、選挙対策上、財政目標はもうお作りにならないのですか?

 最後に、安倍総理は、自民党は変わった、古い自民党の体質はないとおっしゃっていますが、単なるお話しではなく、それをぜひとも証明していただきたいのです。

 経済成長や財政再建などの実現には、コストと努力が必要です。無駄な公共事業は増やさない、道路特定財源は復活しない、TPPや規制改革には歯を食いしばって取り組んでいく、医療費や社会保障の負担増のために国民を説得していく。そうでなければ、経済成長や財政再建はあり得ません。責任野党を目指す私たちも反対のための反対はいたしません。党派を超えて、このような課題にともに取り組んでいこうではありませんか。安倍総理のお覚悟をお聞かせください。

 今後は、予算委員会の場で、さらに具体的に提案をさせていただくことを申し上げ、私の質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。

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