衆議院予算委員会での初質問。
(衆議院予算委員会で質問に立つ岸本周平。)
今日は、衆議院予算委員会で質問させていただきました。いろんな委員会で質問していますが、テレビ放映の予算委員会は初めてで、やりがいがありました。
概要は次の通りです。衆議院TVで見ていただけます。
1.経済動向が政権交代に与える影響について(対総理大臣)
・政権交代の要因はいくつもある。しかし、政権運営が順調であれば、交代の必要がない。リーマンショックの後、景気が落ち込み、国民が何とか、景気を良くしてもらいたいとの一縷の望みを政権交代にかけたのではないか。
・つまり、最悪のコンディションで政権を引き継ぐということに対する覚悟が甘かった。税収はバブル時に60兆円、平時で50兆円。それが、政権を引き継いだ時に、22年度当初予算ベースで37兆円にまで落ち込んだ。しかし、そうでなければ政権は来ない。その認識が甘かった。
2.「失われた20年」の経済停滞の要因分析(対経済財政相)
・1991年から2011年の平均実質成長率は0.9%。「失われた20年」と言われる。
・90年代の低成長の要因は、不良債権問題、つまり「バランスシート問題」であった。金融機関の自己資本が毀損され、成長分野への貸し出し抑制と、その結果の成長期待の低下による家計、企業の支出抑制が起きた。
・95年からオーバーナイト金利が0.5%以下まで下がり、いわゆる「ゼロ金利政策」が始まった。しかし、民間部門の債務や労働者の「過剰」問題で、資本の収益性が極端に低下しており、資本コストが引き下げられても設備投資に結びつかなかった。
・同時に実施された大規模な公共事業による経済対策は一時的な効果のみで、労働者一人当たりの成長率は上がらなかった。むしろ、生産性の高くない土木・建築産業に資源が配分された結果、労働者一人当たりの成長率が低下した可能性がある。
・その後、02年を転機に厳格な会計基準が銀行部門に適用されて、バランスシート問題が解決され、03年から労働者一人当たりの成長率が回復し、05年から07年の円安バブルで1.5%の成長率となった。
・しかし、2000年代全体では経済成長率はいまだ低かった。これは社会の高齢化により、生産年齢人口が減少したからである。2000年代後半以降、生産年齢人口は1%程度のマイナスであった。
・そして、今後も生産年齢人口はマイナス1%程度で推移するため、仮に、労働者一人当たりの成長率が1.0~1.5%程度あったとしても高い経済成長はなかなか期待できない。
3.その対応としての財政・金融政策の評価と副作用について(対経済財政相)
・これまで、マクロの景気対策として公共事業などの財政政策やゼロ金利政策などの金融緩和策がとられてきた。確かに、先週の日銀の金融緩和と「インフレターゲティング」の導入を金融市場は好感している。野田内閣と白川日銀総裁との協調には敬意を表する。しかし、これまでの政策には、景気刺激効果もありうるが、副作用はなかったのか?
・財政出動による景気対策は、巨額の財政赤字を生んだことに加え、公共事業では労働者一人当たりの成長率は上がらなかった。むしろ、生産性の高くない土木・建築産業に資源が配分された結果、労働者一人当たりの成長率が低下した可能性がある。
・金融緩和政策が、手ぬるいという批判もあったが、これまでの金融政策には副作用もあった。つまり、巨額の財政赤字が民間部門の貯蓄を食いつぶし、資本蓄積を抑制した結果、労働者一人当たりの成長率の回復を阻害した。また、財政赤字の膨張にもかかわらず、ゼロ金利政策や国債購入政策の長期化により、銀行行動を通じ、財政赤字のスムーズなファイナンスを可能にした。
・金融緩和はカンフル剤に過ぎない。労働者一人当たりの成長率を上げ、経済の生産性を高める以外に経済成長は維持できない。資本のコストを低く抑え続けた結果、資源配分を大きくゆがめたのではないか?より収益性の高い投資に向かうアニマルスピリットを殺してしまったのではないか?銀行部門が成長分野を掘り起こすことなく、国債を安易に所有することになったのではないか?受取利子所得も90年の35兆円が、10年には5兆円にまで下がった。これでは個人消費は冷え込むはずである。
4.非ケインズ効果の存在と対応策(対経済財政相)
・日本の社会保障制度は公的債務の増大で運営されている。いわゆる高齢者3経費は消費税の国分が充当されることになっているが、11年度予算ではすでに10兆円の差額が発生し、赤字国債でファイナンスされている。
・したがって、現役世代は社会保障の持続可能性に疑問を持ち、将来不安から消費を抑制するという「非ケインズ効果」が発生している可能性がある。実際、貯蓄率そのものは低下傾向にあり、足元では0から2%程度であるが、高齢化要因を調整した推計では、安定して20%前後で推移している。近年、上昇の気配すら見られる。
・この非ケインズ効果は1980年代のデンマークやアイルランドに見られた現象であるが、日本でも国債残高増加による非ケインズ効果という副作用が現れているのではないか。
・一方、非ケインズ効果は資本蓄積という「供給サイド」からも発生している可能性がある。巨額の財政赤字が民間部門の貯蓄を食いつぶし、資本蓄積を抑制するのである。
・ケインズ的なクラウディング・アウトは起きていないが、少なくとも、09年度からは民間部門と一般政府からなる「国民純貯蓄」はほぼゼロとなった。つまり、戦後一貫して続いてきた「富の蓄積」がストップ。
・また、08年から、民間部門の総固定資本形成は固定資本減耗を下回り純資本ストックの拡大も止っている。これは、企業部門でみれば「更新投資」すら十分に行われなくなったことを意味する。
6.社会保障・税一体改革が経済対策にもなる(対総理大臣)
・以上の分析から、なかなか高い成長がすぐには見込めないことがわかる。日本の社会保障制度は人口増加と高い成長を前提に作られたため、生産年齢人口が減少し始めてから、機能不全に陥っている。そして、現役世代は社会保障の持続可能性に疑問を持ち、将来不安から消費を抑制するという「非ケインズ効果」が発生している。そうならば、社会保障と税の一体改革を進めることによって、財源の裏付けのある社会保障制度を確立することで、現役世代の消費回復を通じ、成長回復が可能になる。
・仮に、政府の新成長戦略が功を奏し、名目3%の成長が実現できればそれは望ましいことである。しかし、その場合には、名目金利も上昇することになる。金利の上昇よりも税収増が先に来る「良い金利上昇」であれば、問題ないが、金利の上昇が先に起きた場合、利払い費の上昇で予算が組めなくなるおそれがある。
・今の新発国債の平均利回りは1%台の半ば。80年代の国債金利はだいたい6から7%。90年代には4から5%。2000年代には2から3%とどんどん下がった。そうなると、国債の発行残高が80年の5倍に膨らんでも、利払い費の総額は増えないばかりか、2000年代には減少すらした。
・そのため、いくら借金を増やしても、利払い費が増えないので、財政当局も政治家も神経がマヒしたように、財政規律を失ってきた。ところが、金利の低下はここまで。今から長期金利が2%台半ばになると、20年には国債の利払い費が約23兆円になるという金融機関の試算もある。10年度の利払い費は約8兆円。利払い費だけで、15兆円、消費税で約6%分も増える勘定。これでは、予算は組めない。実際、12年度の当初予算ベースでは、利払い費は約10兆円に2年間で2兆円も増えた。
・内閣府作成の「経済財政の中長期試算」では、国債費の金額は示しているが、利払い費と債務償還費の内訳は示していない。これは情報開示すべきである。
・慎重シナリオにしても、成長戦略シナリオにしても金利が上がってくる23年度には国債費は11年度の2.5倍から3倍に達している。おそらく、利払い費が高騰している。基礎的財政収支がそれなりに均衡しているのは、税収が蹴上げられているためである。そのようなバラ色の経済を期待したいが、税収を保守的に見込めば、一日も早く社会保障と税の一体改革を進めるべきであるということではないか?
(以上です。)
私たちのために。
私たちの子供たちのために。
私たちの大切な人のために・・・。
信じられない政治に終止符を打つ。
そして、信じられる政治を創るために。