為替に関する見方。
ご質問があったので、お答えします。
実質実効レートに関してです。まず。実効為替レートは、たとえば円がドルやユーロなど他の主な通貨に対して、総合的に高いか安いかを調べる際に使います。各通貨とのレートを貿易額のウエイトで加重平均します。それに、物価の影響を加味したものが、実質実効為替レートです。
マスコミ報道では、対ドルだけの議論がなされますが、対ドルで円高でも、対ユーロで円安という時もあります。今は、両方に円高ですが。
その実質実効レートが、日本だけが1998年以降、一貫して物価が下がり続けていますので、相当低くなっています。15年前に比べれば、約3割低いのです。
もちろん、計算上の実質実効レートだけで、すべて説明できませんが、国内物価の低さを考えれば、名目の為替レートだけで、右往左往する必要はないということを前のブログで申し上げました。
この連休にワシントンに出張しました。サラダバーからお皿におかずを取って、重さで値段の付くカフェで、ランチを取りました。
ほんとに、ジャンキーなたいしたことのない食事でも12ドルほどします。15年前にアメリカに住んでいた時は、8ドルくらいの記憶があります。アメリカでは、毎年2%程度物価が上がっていますから、当然ですね。
12ドルは、1ドル85円で換算すれば、約1000円。日本なら、500円程度のものなのに。1000円の値打ちはありません。
しかし、もしも円安で1ドル170円なら、このランチが2000円もします。
15年間の日本のデフレの深刻さと円高のありがたさを肌で感じました。
もちろん、日本経済にとって、輸出産業は重要です。ですから、法人税を下げたり、古い規制をなくして、日本企業に高付加価値の輸出産業を残すべきです。
一方で、日本は他の先進国に比べて、GDPに占める輸出の比率はとても小さい国です。1億2千万人の大きな国内市場があるため、個人消費や住宅、設備投資などが中心です。アメリカに近い構造です。
もっとも、内需に勢いがないので、成長率の寄与度は輸出が大きいです。したがって、2002年からの5年間の神風のような円安で、日本経済はうるおいました。一方で、そのことに安住して、産業構造の転換を怠るという結果になりました。
エネルギーのほとんどと食料の6割を輸入に頼る日本にとって、自国通貨が強いことは国益です。その上で、為替に左右されない高い付加価値の輸出産業を応援する政策を進めることが大事です。