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Blog活動ブログ

2007年12月2日

現代の貧困とグローバル経済

 この季節、中央大学大学院の集中講義の準備がたいへんです。毎週講義することができないので、毎年、後期に合宿して集中講義形式で教えていることはこのブログにも書いたことがあります。

 私の講座の「公共政策過程論」で使うテキストを選ぶのに四苦八苦します。今期は「人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか」水野和夫著、日本経済新聞社(2007年3月)を選びました。

 水野さんは1995年を境に世界経済システムの変革が始まったとの認識で、21世紀は帝国の時代になると予言します。16世紀から17世紀の帝国ロシア、インド、中国がBRICsと名前を変えて、台頭してきました。当時の帝国のオスマントルコも候補です。この4ヶ国で17世紀半ばの世界のGDPの約6割を占めていたとのこと。今の先進国に分類される欧米は約2割にすぎません。

 21世紀初頭、この比率が逆転して、日本を含む欧米先進国のGDPは世界のシェアが約5割、4帝国が約2割となりました。水野さんは2050年にはこの旧4帝国が復活して、17世紀半ばと同じGDPのシェアとなることを予測します。

 このような長期の歴史的な見方に基づく指摘は、私にはたいへん刺激的でした。「目からうろこ」とはこのことかと久しぶりに知的感動を受けました。

 さらに、日本経済については、成長する海外のマーケットを相手にしている製造業と人口が減少していく国内市場でのみ活動している非製造業の間に、大きな格差が生じていることも判りました。

 しかも、従来の経済学では「景気が悪くなっても賃金は下がりにくいと」いう仮設がありましたが、成長率の低い非製造業を中心にパートや派遣社員の出現によって、給与が下がるようになったのです。95年には貯蓄ゼロの世帯は全体の8%でしたが、2006年には23%に急上昇しています。高齢化だけではなく、賃金の低下を貯金の取り崩しで対応した世帯があったことが指摘されています。

 大学院での授業では、こういうことを教えていれば用は足りますが、次の選挙に政権交代と本人の人生をかけて戦う私にとっては、厳しい現実です。いまそこにある格差を減らしながら、流通業などの非製造業の生産性を上げる政策を打ち出す必要があります。せっかくの集中講義の機会ですから、学生さん達と一緒に具体策を練ることにしたいと思います。

  
 

イッセー尾形

2007年12月1日

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二大政党による政権交代

2007年12月3日