和歌山の児童養護施設の実態
先週末の新聞記事の中に、「和歌山市にある児童養護施設旭学園で、20年間にわたって職員が入所児童に体罰を加えていたり、子供どうしのいじめがあったとして、和歌山弁護士会が旭学園を運営する社会福祉法人に警告書を出した。」というものがありました。同弁護士会は、監督機関である和歌山県や設置者の和歌山市にも指導監督を強化するよう勧告書を出しています。地方紙の記事はさらに詳しく、警告を受けた社会福祉法人「和歌山社会事業協会」が一族支配で理事長職や園長職を固め、ずさんな管理体制をしいていたことが報じられています。
旭学園などの児童養護施設を実際見たことのない市民が、この記事を読んで、本件の深刻さを理解することは難しいと思います。まず、「児童養護」施設の意味が分かりません。恥ずかしながら、私も和歌山に帰ってきて、旭学園だけではなく、虎伏学園、こばと学園などの施設を見学して初めて知りました。
児童養護施設は、戦後の戦災孤児を収容する施設としてスタートしました。その後、孤児たちが巣立つ一方で、親に捨てられた子供や、どうしても親と一緒に生活できない子供たちが預けられるようになります。今では、施設にもよりますが、育児放棄(ネグレクト)、虐待などで親と一緒に住まわせられない子供たちがかなり増えてきています。
施設に見学に行くと、大人の愛情に飢えている子供たちがそれこそ「まつわりつく」といった感じで離れてくれません。一方で、虐待を受けた子供は大人に対して不信感を持ちます。育児放棄を受けた子供は実際の年齢の半分くらいの体格です。ある意味、普通の市民にとっては「非日常」の世界なのです。それだけに、この記事を読んで胸が詰まりました。
しかし、新聞記事に書いていないことがあります。おそらく記者さんが現地で取材をしていなからでしょう。戦後の設置基準が変更されていないせいか、21世紀の今でも、20畳の畳の部屋に定員が8人。自分の学習机すらなく、私物はプラスチックの箱2箱に収納されているだけです。何とか男女の区別はなされていますが、2歳から18歳までの子供がそのような環境で育てられているのです。このような生活環境も体罰同様、今すぐに見直されるべきだと私は思います。
旭学園では、昨年、体罰問題が発覚して園長が変わりました。後任の中村通雄園長は立派な方で、園内で職員への指導力を発揮するとともに、徐々に、2,3人で1室、二段ベッドと自分の学習机のある部屋に改築しておられます。幸い、こばと学園は昨年、建物の改築が完成し、既にすべての子供たちが3、4人で1室、二段ベッドと自分の学習机のある部屋で生活しています。虎伏学園は施設の子供たちのために小中学校の分校が併設されているところですが、生活環境は昔のままです。この事件をきっかけに、何とか児童養護施設の生活環境を改善していきたいものです。