TPPの国会審議が教えてくれた大事なこと
来週には、日本の国会がTPPの批准を終わらせます。
一方で、トランプ次期大統領がTPPからの離脱と二国間の自由貿易交渉を開始することを公式に発表しました。したがって、当分、TPPが実現することはなくなりました。
しかし、私は国会での議論は決して無駄ではなかったと思っています。
TPPは、貿易問題だけではありません。投資や、金融、人の移動、保健・医療、政府調達、ISDS条項など国民生活に影響する多くの分野が対象です。
今回の国会審議で良かったことは、食の安心、安全について議論がスタートしたことです。
私自身も、貿易や投資には土地勘がありましたが、特別委員会のメンバーとして幅広く勉強する中で「不都合な真実」のいくつかを見つけました。
たとえば、これまで米国から輸入していた牛肉や豚肉は成長ホルモンや成長促進剤を使っていました。そもそもEUなどではそのようなお肉は輸入禁止です。EUでは1989年に禁止してから2006年までに、乳がんの死亡率が平均で3割程度減りました。
日本では、国内では成長ホルモンや成長促進剤の使用は禁止されていますが、それを使ったお肉は輸入できるというダブルスタンダードです。しかも、そのような表示をする義務はありません。
遺伝子組み換えの作物も輸入されています。米国から輸入されるとうもろこしや大豆の9割は遺伝子組み換えです。日本ではその表示義務がゆるいのですが、米国はさらに表示をしないように圧力をかけてきています。
米国からは、収穫後にもレモンなどに使われる農薬の「防かび剤」を食品添加物として認めさせられ、その表示すら止めろと押しまくられている実態もあります。ちなみに、日本では、収穫後の作物に農薬をつかうことは法律で禁じられています。だから、「食品添加物」とみなすとい方便を使っています。
今後、日米の二国間で交渉が始まるならば、自動車や農産物の議論をすると同時に、食の安全の問題をしっかりと提起し、国民の生命を守るべきだと考えます。その意味では、トランプ次期大統領のおかげで、良いチャンスがもらえたわけです。トランプさんに感謝です。