東京オリンピック・パラリンピックで日本の食材が使えない?
今日の農林水産委員会で、タイトルの観点から質問に立ちました。
以下、その概要です。
今話題のTPP協定ができれば、日本の農林水産物の輸出を増やすことができると安倍内閣は宣伝しています。
私も、日本の品質の高い安全な農林水産物の輸出促進には大賛成です。しかし、安倍内閣の掲げる、現在約7000億円の輸出を1兆円に増やすという目標はある意味眉唾(まゆつば)です。
いわゆる農林水産物・食品の輸出額の内、上位10品目を見ると、水産物や、アルコール飲料、清涼飲料水、たばこ、ソース混合調味料などです。
清涼飲料水の輸出の主なものはオロナミンCやポカリスエットなどですから、清涼飲料水の輸出が増えても、日本の農家の所得は増えません。
農林水産物・食品の輸出額の内、リンゴ、牛肉などの生鮮農産物の占める割合は5%程度です。
いたずらに農林水産物の輸出でバラ色の夢を振りまくことには反対ですが、地道に輸出を増やす努力をすることには賛成です。
しかし、海外で買ってもらうためには農産物ならグローバルG.A.P.、食品ならHACCP、木材ならFSC(Forest Stewardship Council)などの認証取得をしなければなりません。
一方で、日本では国際認証に関する意識が低く、たとえば、グローバルG.A.P.については、今年の1月時点で282件しか取得していません。これでは、輸出したくても海外では売れません。
農林水産省は、一般財団法人食品マネジメント協会という天下り団体を作って、日本独自の認証を作ろうとしています。
しかし、国際的な団体のGFSI(Global Food Safety Initiative)が承認するスキームでなければ、意味がありません。グローバルG.A.P.はGFSIの承認を得て、世界130カ国で15万件の認証をしているデファクトスタンダードです。
今から、日本独自の認証システムをつくってGFSIの承認を受けるよりもグローバルG.A.P.を一日も早く日本の農業に適用する努力をすべきです。
食品に関するHACCP導入についてもまだ3割程度の段階です。
導入が遅れている要因としては、HACCPは製造工程でのリスクを分析しリスクの生じる行程を管理することで、安全を確保する「やり方」の問題なのですが、設備投資などが必要だとの誤解があることなどが指摘されています。
そのような問題点を克服するために政府はもっと努力をすべきです。
国内で、グローバルG.A.P.をベースにした独自規格で認証をする団体もありますが、GFSIに認められないので、国際的には通用していません。木材でも、全国木材組合連合会が母体となった組織による合法証明は国際的に評価されていません。
2012年オリンピック・パラリンピックロンドン大会での食材(農産物、畜産品、水産品)や木材の調達基準はたいへん厳しく設定されています。
英国国内の認証制度であるレッドトラクター認証やグローバルG.A.P.が基準とされ、特に水産品に関してはFAO(MSC認証を含む)が基準とされています。木材に関しては先述のFSCが適用されます。
日本で開催されるオリンピック・パラリンピック大会では国際社会に対して恥ずかしくない調達基準を設定することが海外から求められています。
この際、海外からの圧力を逆手に取って、国際認証であるグローバルG.A.P.やFAO、FSCなどを基準とすることで、国内の意識改革を進める絶好の機会にするべきではないでしょうか。
今、日本の水産物でMSC認証が取れているのは北海道のホタテと京都のアカガレイの二つだけです。グローバルG.A.P.は先述の通り282件だけ。
このままでは、2020年の東京の選手村では日本の食材はほとんど使えないことになります。
東京オリンピック・パラリンピックでの食材(農産物、畜産品、水産品)および木材の調達基準に国際認証を用いることをきっかけに、農林水産物の輸出大国を目指そうではありませんか。