「子どもの貧困」をどう解決するのか?
(阿部彩著、「子どもの貧困 I I」、岩波新書、2014年1月)
厚生労働省が発表した「国民生活基礎調査」によると、2012年の相対的貧困率が16.1%と過去最悪になり、17歳以下の子どもの貧困率は16.3(2011年、15.7)%に達し、全体を上回りました。
相対的貧困率とは、国民全体の手取りの年収を少ない方から順番に並べて真ん中の金額(2012年は244万円)の半分以下の手取り収入に届かない人の割合のことです。子どもの場合は、同居する親などの所得で計算します。
こんなに大勢の人々が貧困で苦しんでいることには、まだまだ多くの国民は気づいておられないと思います。先進国の中では、最低ラインのところまで来ています。
特に、「子どもの」貧困率は高く、ユニセフの調査では、先進20カ国でアメリカ、スペイン、イタリアに次いでワースト4です。
特に厳しい状況に置かれているのは、以前にこのブログでも書いた「ひとり親世帯」の子どもです。ひとり親世帯の貧困率は2009年の厚生労働省の調査で58.7%とOECD諸国で最悪になっています。
阿部彩著「子どもの貧困 I I」(岩波新書)によれば、子どもの貧困の問題点は、学力の低下、健康の悪化などに加え、自己肯定感を持てないことによる心理的ストレスなどがあり、その結果として、いわゆる「貧困の連鎖」の問題につながります。
阿部さんによれば、生活保護受給世帯の子どもが約29万人、児童養護施設在籍の子どもが約3万人。一方、貧困状況にある子どもは約326万人(2009年)。ちなみに児童扶養手当を受けている子どもは約169万人。
このような状況で、限られた財源の下、どのような政策が望ましいのか?阿部さんも悩みながら政策提言をされています。
私自身も、同じ問題意識を持ちながら、今は、社会的養護の必要な子どもたちを応援する議員連盟の事務局長として政策の提案をスタートさせたところです。
阿部さんは、再分配後に貧困率の逆転現象が起きている日本において、少なくともそれを止めるための現金給付の必要性を主張。特に、ひとり親世帯を中心に取り組むとともに、優先的に乳幼児期の子どもの貧困を改善するために現金給付を拡充することを提案しています。
また、現物給付については、すべての子どもたちにオープンな制度でありながら、所得制限方式でない優先的配分を提案しています。たとえば、定時制高校や夜間中学への予算拡充、児童養護施設、自立支援ホームなど伝統的な施設への大幅な資源投入などです。
さらに、子どもの居場所づくり(放課後プログラム)やメンター・プログラム(1対1でのケア)の拡充に加え、教育から就労への移行期間の子どもたちへのサービスの重要性も指摘しています。
以上のご提案はすべて、大きな政治的決断がないと進みません。私のライフワークとして、ぜひとも、子どもの貧困問題に取り組んでいきたいと思います。