オバマ大統領訪日の評価その2 ― TPP交渉の行方
(マンスフィールド財団のジャヌージ―理事長兼CEOと通商代表部のシールの前で記念撮影。)
オバマ大統領の訪日で、TPPに関する2国間交渉が大詰めを迎えたことは事実です。
ただし、交渉過程が不透明(ブラインドサイド)なため、日本のマスメデアの報道も分かれていますが、米国での評価も二つに割れていました。
日本での報道には、皆さんご存じの通り、豚肉や牛肉で関税の撤廃はないものの関税率の大きな引き下げや、米国の自動車関税はTPPでの最長期間でゼロにするなどの合意がなされ、後は輸入急増の場合のセーフガードの内容や輸入の際の米国車の安全基準などが残されているだけというものがあります。
逆に、米国では、ニューヨークタイムスのように、オバマ大統領は「尖閣発言」で日本に譲ったのに、TPP交渉では回答ゼロで成果を上げられなかったとの批判があります。米国の民主党内でも、けっこうきつい意見があります。
まさに、その辺りがまったく不透明なこと自体が、日米ともに議会では問題とされています。
TPP交渉では、そのプロセスには秘密条項がかかっていることは承知していますが、いずれ議会で批准するわけですから「秘密会」にして、国会議員にはある程度、交渉の内容を教えるべきであると考えます。今、民主党からはそのための法案を出しています。
米国では、その代わりに、政府に一括交渉権を与える「TPA」というものがあります。政府が「TPA」を付与されると、通商条約に関して、条文ごとの議会審議はなく、賛成か反対かだけを議会が決めることになるというものです。
米国憲法上、議会が通商の交渉権を有するというユニークな制度の産物です。
今回のTPP交渉はオバマ政権が「TPA」を持たないまま進行しています。秋の中間選挙までには、「TPA」は無理だろうというのがワシントンのコンセンサスです。
カトラー通商代表部次席代表代行との会談はとても有意義でした。もちろん、交渉の細部はノ―コメントですが、戦略的なお話はうかがえました。
その中で、本当にハイレベルの例外のほとんど無いTPPにすれば、「TPA」が無くても、議会を通すことは可能だし、中間選挙前だって可能性はゼロじゃないとの発言がありました。
時期の問題は担当者の強がりだと割り引いても、他の識者の中にも、「TPA」不要論がけっこうありましたので、おもしろいと思いました。
「TPA」の有無はともかく、中間選挙後、TPP推進派の共和党を中心にTPPが批准されるという意見と、共和党の政治的な思惑で、次期大統領の就任まで延ばすのではないか(但し、その時の大統領が民主党でもOK。)という見立てがありました。
このような米国の出方を注視しながら政府のTPP交渉を監視していきます。
ちなみに、日本の自動車市場が外国車に不利だという米国の言い分に合理性はありません。2013年度の輸入台数は、米国車はマイナス4.3%でしたが、EUの車はプラス23.3%でした。マーケティングや営業努力が足りないだけです。自民党政権には安易な妥協をしないよう強く要請します。