TPPの影響をどう考えるか―北海道の農業の視点から
今日は、日帰りの強行日程で北海道の帯広市、清水町などに行ってきました。
民主党の経済連携・農業再生総合調査会の視察で、北海道の農業についてのTPPの影響を調べる目的です。
まず、十勝平野の農業は4輪作といって、小麦、ビート(てん菜)、馬鈴薯、大豆などの作物を作っています。いわゆる原料作物が多いのです。平均的な作付面積は40ha。
最初に、ホクレンの清水製糖工場の見学。
(砂糖の原料になるビートを洗って、これからスライスします。)
ホクレンは、優良なてん菜種子の供給から、てん菜を原料とした砂糖の製造・販売まで一貫した事業を展開。
北海道内に2つの製糖工場を有し、今日伺った十勝地区の清水製糖工場の他に、オホーツク地区・斜里町に中斜里製糖工場があります。
清水製糖工場では「前段クロマト脱塩設備」など、最先端のシステムを導入し、主にグラニュ糖を製造していますが、上白糖、てんさい糖も製造しています。
TPPによって砂糖が自由化されると、この工場も操業ストップとなります。つまり、十勝地区は農業によって関連工場や物流業者などが生活しているため、農業の衰退は地域コミュニティ―を崩壊させる可能性もあります。
その後、農業生産法人コスモスを視察。
この会社は平成1年に創業。今の社長の安藤登美子さんのご主人が農協を脱サラして立ち上げましたが、三年後に交通事故でお亡くなりになり、奥さんが遺志をついで、ここまで育て上げたとのこと。
2200頭のホルスタインの雄牛とブラウンスイス牛を育てています。従業員はアルバイトを入れて15人。14か月の育成期間で市場に出す「十勝若牛」とブラウンスイス牛の「十勝ぼうや」がブランドです。
これまでたいへんなご苦労されてきたお話とともに、TPPによって競争力を失うかもしれないという不安の声をお聞きしました。
市役所に勤めている息子さんが、コスモスに入ると言ってくれた時に、安定した生活を捨てることへの母親としての心配と、若い従業員を預かっている社長としてはそんなことは言えないという思いが交錯したそうです。
結局、息子さんは跡を継いでくれるそうです。そにためにも、頑張らなければとおっしゃていました。
お昼には、ご当地グルメの牛玉ステーキ丼をいただきました。低脂肪で柔らかな赤身肉の豊かな旨みと味噌の味付けがごはんにからみ、とってもおいしかったです。
コスモス直営の「レストラン風車」の他、清水町内の12の店舗でご当地グルメとして販売しているそうです。
(十勝若牛のサイコロステーキとふわふわスクランブルエッグに道産米の牛玉ステーキ丼)
最後に、地元の若い農業経営者の皆さんとの意見交換会。
20歳代、30歳代の若い方々の農業に対する真剣な思いをうかがいました。
「教師になろうと思って、大学に行ったけど、やはり故郷への思いが強くて、子や孫に十勝の農業を引き継ぎたい。」と戻った方もいました。
「どうせ、国会議員に言っても何も変わらないだろうけど、熱い思いで農業に従事している自分たちのことを知っておいて欲しい。TPPがこようが、何がこようが、自分たちは十勝で農業にしがみついて生きて行く。」との発言もあり、感動しました。
私は、TPPそのものには賛成の立場です。アジア太平洋経済圏での日本の生き方としては他に方法がないことや、安全保障の面からも日米、日豪、日アセアンのきずなを深める必要性があることなどが理由です。
しかし、交渉事ですから、砂糖や米などの重要5品目を例外として守ることは当然、国益の観点から必要です。その意味で、現政権が、日米二国間で早々と自動車関税のカードを切ってしまったことが悔やまれます。
日本の農家の平均年齢は66歳ですが、北海道は54歳、十勝は51歳です。アメリカの平均57歳よりも若い農業経営者がやっているのですから、TPP交渉の結果はともかく、彼らの農業を守る政策を超党派で考えていくことが私たち政治家の仕事だと、改めて再確認しました。