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2022年2月8日

所得税法等の一部改正法案に関する代表質問

 1月31日に衆議院本会議で行った所得税法等の一部改正法案に関する代表質問の内容を載せます。少し長いですが、ぜひお読みください。

『政府は1月27日、ガソリン補助金制度を実施しましたが、現場のガソリンスタンドでは値下げは一部に限定され、据え置きもしくは引き上げたスタンドすら見られ、たいへん混乱しています。先の臨時国会で国民民主党と日本維新の会で法案を提出した「トリガー条項の発動」が今こそ必要であると考えますが、総理のご見解をうかがいます。

 これまでのコロナ対応の予算がすべてワイズスペンデイングと言えるどうか疑問です。トリガー条項の発動は費用対効果の観点からもぜひとも進めるべき政策だと考えます。

 仮に、これまでのコロナ対応策も緊急避難的なものとして許容するとして、2020年度、2021年度の補正予算を加えた公債依存度は、それぞれ74%、46%となります。歳出の5割から7割を借金に頼る財政は講学上「放漫財政」と呼ばざるを得ません。2022年度当初予算における公債依存度は34%で、コロナ禍以前の数年と同様の比率です。これは「放漫財政」と呼ばないまでも、明らかに「積極財政」に分類されます。

 安倍内閣、菅内閣と積極財政を続けながら、おしなべて低い経済成長率しか実現できないばかりか、潜在成長率はほぼゼロになっています。アベノミクスが目標とした2020年度の名目GDPは600兆円でしたが、実績は536兆円に過ぎませんでした。これは2007年度の水準です。財政、金融政策はカンフル剤にはなっても経済の構造を変える力はありません。

 そして、私も含めてこのような状況に感覚がマヒし、与野党ともに財源の議論はほったらかしにして、歳出増加の議論のみをしています。それが可能になっているのは、家計や企業の民間部門が消費や投資をせずにひたすら貯蓄を増やし、その金融資産を担保に日銀が国債を吸収することができるからです。経済が成長しないため、金利が上がらず、本来機能すべき財政規律がはたらきません。

 このままでは、低成長で低金利の生ぬるい経済状況の下、まさにMMT(現代貨幣理論)のモデルとも言えるような事態が今後数年間は確実に続くと思われます。

 しかし、経済学の教えるところによれば、「タダのランチ」はありません。民間の貯蓄が公的な債務を吸収できなくなるか、大きな経済的イベントが起きれば、インフレになることは確実です。MMTの学者は、インフレになりそうになれば、その時、増税するか歳出をカットすれば良いと言いますが、それは現実的ではありません。

 1992年に土地バブル対策として導入された「地価税」は議論が始まってから施行まで3年かかっています。当時の国会議員よりも私たちの方が優秀であると私には思えません。インフレは3年も待ってくれません。

 コロナ禍と戦っている今現在、増税や歳出削減の議論をするべきと申し上げているわけではありません。しかし、根拠のない高い経済成長率を前提に、国民の誰もが信用しないプライマリ―バランスの黒字化目標を掲げてお茶を濁すのではなく、コロナ禍が収束した後には、財政の健全化に向けた建設的な議論をすべきだと考えますが、総理の見解をお示しください。

 東日本大震災の後、巨額の復興予算が必要となりました。その時の国会は、将来の世代にツケをまわさないために、震災復興特別税を決めました。その結果、2年間の復興特別法人税に加え、一世代の25年間、2.1%の所得税の付加税を徴収し、住民税は10年間、1,000円引き上げる形で徴収し、財源に充てることができています。

 今回のコロナ対策の財源として、イギリスは2023年からの法人税率引上げや配当所得への増税、国民保険料の引上げを決定。ドイツ、フランスではコロナ対応予算の公債は2042年までに償還することを決定しました。アメリカでは、2021年11月に成立した「超党派インフラ法」の財源は補助金延期や手数料等により確保した上、議会で議論中の「ビルド・バック・ベター法案」の財源については法人税や富裕層への増税が検討されています。(また、ドイツでは2020年7月に引下げられた付加価値税を2021年1月に元に戻しました。イギリスでも同様に2021年10月、2022年4月の2段階で元に戻します。)

 コロナ禍に対応するため、真に国民の命と暮らしを守るための歳出増加はやむを得ないと考えますが、そのための債務は特別に管理し、将来は震災復興特別税のような仕組みで、後代に負担を残さないようにすべきではないですか。総理のご所見をうかがいます。

 次に、本法案の目玉政策である賃上げ税制について質問します。この30年間で、アメリカの名目平均賃金は約2.4倍増加する中、日本は横ばいとなっています。

 賃金を引き上げることは日本経済にとって喫緊の課題であり、わが党も先の衆議院総選挙では「給料が上がる経済」を公約に掲げました。

 しかし、企業の生産性が向上しない限り、賃金は上がりません。政策のターゲットは企業の生産性向上であるべきです。減税があるからといって賃金を上げる企業などありません。これまでの制度でも、たまたま、生産性が上がり、賃金引き上ができた企業が、いわばご褒美として減税の恩典に浴しているだけで、政策誘導効果はありません。総理のご認識をうかがいます。

 百歩譲って、政策効果を認めるとしても、国民の税金で給料を上げるくらいであれば、直接、所得型の給付付き税額控除を実施した方がわかりやすいのではないでしょうか。その財源を、総理が自民党総裁選で主張された株式配当などへの金融所得課税に求めれば、所得再分配にも資することになり、格差是正が進みます。財源は所得控除の整理・縮減でも捻出できます。所得控除から税額控除に移行すれば、富裕層の負担を増やし、所得再分配効果がさらに強化されます。総理のご見解をうかがいます。

 アメリカのコメデイー映画で、デカプリオ主演の「ドント・ルック・アップ」という映画が流行っています。アメリカの分断を風刺する映画です。地球を破壊する巨大隕石をめぐって分断が生じ、大統領派は隕石が近づいている事実を認めないよう、国民に「空を見上げるな(ドント・ルック・アップ)」とキャンペーンします。そして、隕石が地球に激突して人類が滅亡する物語です。

 与野党を問わず、私も含め同僚議員の皆さまと共に、日本の財政問題の不都合な真実から目をそらさないように努力すべきことを訴えて、質問を終わります。』

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